第 1 章
竜神目覚めるとき
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「当番制にしたらいいんじゃねぇ?」
休み時間、愚痴っていると、隣席の友人がそう言った。
「冗談。ヒロが約束事を守ったりするもんか。第一、ヒロの作るものなんて口にできると思う?」
潤也のその台詞に、彼は笑う。
「それなら文句言っても仕方ねぇじゃん」
その通りなのだが。
潤也にも分からないでいた。どうしてか、このごろやたらと不満に思うことが多くなっていた。普通ならそう気にしないだろうことなのに、妙に腹がたって仕方がない事が多くなったのだった。
何に不満なのか、焦点がぼやけていて、もやもやした感じだった。
ため息つく潤也の耳に、ふと、聞こえてきた声。
「…くん、今日も来てないんだって」
「えー、また? 2年になってから、しょっちゅうだよね」
見やると、潤也の少し後ろの席に腰掛けて、女子二人が噂話をしていた。
「あそこのクラス、まとまってて仲が良いって言うのに」
「だから入っていけないんじゃない? 孤高の佳人ってカンジだもんねぇ」
「あ、それそれ。言えてるぅ」
言って、楽しそうに笑い合っている。
と、友人につつかれた。
「お前、どっちだ?」
「は?」
潤也は、何を聞かれたのか一瞬分からなくて、相手の顔を見やる。と、ニヤニヤ笑いながら返して来る。
「今、すげー切なそうな顔して、あの二人、見てたぞ」
「な、何だよ、それ」
「こりゃ、絶対に恋だとにらんだんだけど…?」
はぁと、潤也は大きくため息。今日、これで何回目だろうか。
「残念だけど、的外れだよ」
「違うのか? チェッ、せっかく優等生委員長の弱みが分かると思ったのに」
心底残念そうに言ってくれる。潤也はその彼に苦笑を返す。
弱みなんて、決定的なものがあるから。
思って、そっと胸を押さえた。
と、その時だった。
ぐらっと床が大きく揺れた。
教室の窓ガラスが弾けとぶ。それと共に突風が教室を駆け抜けた。
女子達の黄色い悲鳴が耳をつんざく。
一体何が起こったのかと、顔を上げた潤也の目に映ったモノ――窓の外、はるかな空に浮かぶ長いもの。
――竜?
途端、再び激しい衝撃が襲う。先程よりもずっと大きな揺れだった。
戸口へ我れ先にと駆け出そうとする生徒達。
狭い出口で折り重なるようにして倒れる。
その中に混じって、潤也は他の生徒達に圧しつぶされる。
その潤也が見たものは、もう一体、赤い炎のような竜だった。
「ヒロ…」
意識が遠くなりながら、潤也は兄の名を呟いていた。
* * *