第 1 章
竜神目覚めるとき
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寛也は、朝から潤也の3倍は食べる。
潤也の身体が弱い分、幼い頃から寛也は人一倍元気で、腕白だった。
その分、食べる量も半端ではなかった。冬服を着ている間は余り分からないのだが、5月のゴールデンウィークも過ぎた今の時季になると、自分はかなり見劣りすると感じざるを得なかった。
自分の腕についている肉と同じ分、寛也には筋肉がついている。
そんなに恵まれているうえに、自分勝手に振る舞える。昔から、羨ましいと思うことしかできなかった。
多分、寛也程に丈夫だったら、もっと色々なことが言えただろう。
自分の思いをいつも胸の中にしまい込んで、我慢することに一生懸命にならないでも良いのだろう。
きっと、「初恋の人」にも思いを伝えられていたに違いない。
そう思って、無い物ねだりをしていることに気づく。
気分が落ち込みそうなので、話題を寛也に振った。
「それより、ヒロの方こそどうなのさ? 好きな子の一人もいないの?」
言ってしまって、朝っぱらからする会話でもないかと思ったが、寛也の話した夢にそのまま影響されたのか、恋愛談義になってしまった。
「俺? んなもん、いねぇよ。興味ねぇし」
牛乳を一口飲み込んでそっけなく返してくる。
「それより、俺の目下の目標は…」
言いかけて、言いよどむ。
「何?」
「いや、まあ、いい」
「途中で止めないでよ。気になるだろ」
へへへと笑って、そのまま寛也は食事に食いついた。
どうせろくな企みじゃないだろう。
「もう、花火の暴発事件みたいなのは勘弁してよね」
そう言うと、サッと顔色が変わった。