第 1 章
竜神目覚めるとき
-1-

3/10


 寛也は、朝から潤也の3倍は食べる。

 潤也の身体が弱い分、幼い頃から寛也は人一倍元気で、腕白だった。

 その分、食べる量も半端ではなかった。冬服を着ている間は余り分からないのだが、5月のゴールデンウィークも過ぎた今の時季になると、自分はかなり見劣りすると感じざるを得なかった。

 自分の腕についている肉と同じ分、寛也には筋肉がついている。

 そんなに恵まれているうえに、自分勝手に振る舞える。昔から、羨ましいと思うことしかできなかった。

 多分、寛也程に丈夫だったら、もっと色々なことが言えただろう。

 自分の思いをいつも胸の中にしまい込んで、我慢することに一生懸命にならないでも良いのだろう。

 きっと、「初恋の人」にも思いを伝えられていたに違いない。

 そう思って、無い物ねだりをしていることに気づく。

 気分が落ち込みそうなので、話題を寛也に振った。

「それより、ヒロの方こそどうなのさ? 好きな子の一人もいないの?」

 言ってしまって、朝っぱらからする会話でもないかと思ったが、寛也の話した夢にそのまま影響されたのか、恋愛談義になってしまった。

「俺? んなもん、いねぇよ。興味ねぇし」

 牛乳を一口飲み込んでそっけなく返してくる。

「それより、俺の目下の目標は…」

 言いかけて、言いよどむ。

「何?」
「いや、まあ、いい」
「途中で止めないでよ。気になるだろ」

 へへへと笑って、そのまま寛也は食事に食いついた。

 どうせろくな企みじゃないだろう。

「もう、花火の暴発事件みたいなのは勘弁してよね」

 そう言うと、サッと顔色が変わった。


次ページ
前ページ
目次