第7章
崩れゆく砦
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 潤也達の気をたどって瞬時に移動した先で、翔はいきなり襲い来た突風に、危うく吹き飛ばされそうになった。何とか踏ん張り、何事かと周囲を見回した。そこは瓦礫の山だった。

 その瓦礫さえも巻き上げて、強風が渦巻く。翔はその風の力の源を探った。

「翔くんっ」

 と、名前を呼ばれ、反射的に振り向く先に、紗和が姿を現した。

「この風、潤也さんですか?」
「父竜が現れたんだ。凪が戦っている」

 途端、頭上に気を感じたかと思うと、翔は紗和に腕を取られた。次の瞬間、目の前の景色が一変した。今までとは別の場所に移動したのだ。

 破壊された街から遠く離れた場所と思われるそこは、郊外の牧草地だった。数キロは離れているのだろうか。しかし、そこからは、恐らく札幌の上空であろう場所で巨大な竜雲の渦巻いているのが遠くに見て取れた。

「あの気が…潤也さん…?」

 ここからでも十分に感じ取れる父竜の巨大な気。それとともに、もうひとつの気が感じられた。それは、今までの凪の持つものとは掛け離れた、見たこともない程の強大なものだった。

 しかし、それは確かに彼のものだった。

 一体何があったのか。

「凪の竜気は殆ど残っていない筈だったんだ。それなのに…」

 紗和の言葉に、翔は竜玉を握り締める。転身するのだと知って、紗和がすぐさま制止の声をかける。

「凪は止められないよ」

 その言葉に返事をすることなく、翔は掴まれていたままの手を振り払った。

 素早く天へ掲げた竜玉から銀色の気が舞い上がる。それは、ものすごい勢いで、遠くに見える竜雲を目指して飛び立った。あっと言う間のことだった。

「人の言うことを全然聞かないんだから」

 ため息交じりに呟く紗和。

「今、凪を失う訳にはいかないと思ったんだろう」

 そう紗和の背に声をかけてくるのは聖輝だった。

「凪のあの気の強さは、断末魔だ」

 そう言う彼に、紗和は背を向けたまま答える。

「だからって、何の策もなく飛び出して行くなんて…」
「考えても策なんて出てくるのか? あの父竜の力に対して」

 紗和は翔の後ろ姿を目で追いながら、そう言った別の声に返す。

「弓月、送るから留守番組の二人と代わってもらえるかな?」
「は?」

 何で自分がと言いかけて、優はすぐに返す。

「ここで戦うなら、全力だろう? 残る連中を今のうちに連れて来ればいい」
「鎖鉄と戦はともかく、他は足手まといだよ。到底、敵わない」
「言いにくいことをズケズケと…」
「さあ、行くよ」

 紗和は優の腕を取る。

 と、その時だった。

 天上から強大な衝撃波が降ってきて、辺りを包んだ。

「何だっ!?」

 紗和はとっさに防御バリアを張った。その透明なシールドの向こうに、まばゆい閃光が放たれたのを見た。



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