第7章
崩れゆく砦
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力を込めた右手の平で、思ったよりもあっけなく砕け散った最後の勾玉。その感触とともに、揚は身の内から沸き立つ力を感じた。この感覚――古の時代に封じ込められた力が蘇ってきたのだった。
揚はそのまま天へ駆け昇った。
身を震わせるだけで轟く雷鳴。巻き起こる風。
見下ろせば、この世の有りとあるものが見渡せた。
眼下にある僅かな人影など、取るに足らぬ存在だった。いや、むしろ、今まで勾玉を使って自分の力を封じ込めていた者達だ。果たしてこのまま簡単に踏みにじるだけでは腹の虫が収まらない気がした。どうしてくれようかと、楽しげにそれを考えようとしたその時、眼前に火柱が立ち上った。
『戦か…』
賢しくも己に刃向かう子竜に、揚は僅かに笑みをこぼしてから、炎の柱に向けてブレスを吐き出す。巨大な炎を吹き消す風の前に、しかし炎竜も踏みとどまった。
『てめーだけには負けられねぇっ! 杳を苦しめる奴は絶対に許さねーっ!』
父竜と同じように吐き出すブレスは、炎の塊となって父竜に向かう。それを難無くかわして、揚の繰り出すのは雷を伴った爆風だった。炎竜のものとは明らかに威力の違うそれをとっさに避けるが、その直後に、後方に人影のあることに気づいた。
『しまった…』
父竜が口元だけで笑ったのが、目の端に映った。
浅葱達に向けられた攻撃を代わりに受け止めようと、飛び出したの露だった。
まだ転身もしていない身で、石で作る厚いバリアを張ろうとする。が、防御の苦手な彼にその攻撃が受け止められる筈もないと本人すら思った時、その攻撃の刃が一瞬で消滅した。
『…え?』
何が起こったのか、誰一人として理解できかなった。それは、バリアで跳ね返したものでも、反撃による相殺が生じたものでもなかった。まるで空気に溶け込むかのように消えてしまったのだった。
父竜の舌打ちが聞こえた。とともに、先程と同じ攻撃を繰り返そうとする。
『させるかっ』
一瞬のことでも、指をくわえて見ていてる寛也ではなかった。瞬く間に全身に炎を纏うと、そのまま父竜目がけて体当たりした。
揺らぐ巨竜の身体。今まさに吐き出そうとしていたブレスは、方向を見失い、風に消えた。
寛也はそのまま身の力を強め、巨竜の身体を自らの炎の中に巻き込んだ。
相手の弱点は知れていた。攻撃を跳ね返す厚い鱗を避け、腹を狙った。それなのに、父竜は一向に痛手を受けた様子もなく、炎竜を見下ろして口元を吊り上げたように見えた。
『いつまでも同じ手が通用すると思うな、戦』
声が聞こえると同時に、炎竜は弾き飛ばされた。
地響きとともに、砂浜に全身を打ち付けられた。すぐさま首をもたげようとした瞬間、父竜の吐き出した巨大電磁波を伴ったブレスが迫ってきた。