第7章
崩れゆく砦
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「あら、炎竜は?」

 寛也を呼びに言った筈の露が一人で返って来たのを見て、百合子は眉を寄せた。

「ありゃ、ダメだよ。相当ショックみたいで、しばらく使い物にならないかもなぁ」
「責任、感じてるのかしら。自分が連れ出したからって」

 百合子の言葉に、横で聞いていた美奈が顔を上げる。その目はまだ真っ赤だった。

「ま、それだけじゃないと思うけど」

 含みを持たせた言葉を吐いて、露は続ける。

「仕方ないから、アイツは放っておいて、オレらだけで行こうか」
「でも…」

 美奈は顔を伏せる。

 美奈達が外へ出る為に翔の出した条件は、自分達では敵との力の差があり過ぎるので、せめて連れ出す人数一人について一人の護衛をつけることと、竜達も二人以上で行動することだった。露一人ではとても外へ出してはくれないだろう。

 そう思う美奈と百合子に、露は軽い調子で言う。

「へーき、へーき。オレが何とかするって。大将くらい、言いくるめるの、訳ないから」
「駄目だよ」

 と、タイミング良くも、後ろから声がした。翔だと気づいて、露は慌てて振り向く。

「言ったよね、単独行動は危険だって。二人でも心配なのに、君一人でなんて行かせられる訳ないだろ」
「大丈夫だって。敵が出てきたら全速力で逃げるから」
「僕達の中で一番ドンソクの君が? 無理だよ」

 翔の嫌みに、露は今までの調子者の表情を一変させて、翔の胸倉をつかみ上げる。

「それならお前が行けよ。この子達、閉じ込められて可哀想だと思わないのか?」

 露はすぐに手を放すが、睨んだままで言う。それに対して、襟元を直しながら翔は淡々とした口調で返す。

「思うけど、今はそんなこと言ってる時じゃないだろ」
「それはオレ達の都合だろ? この子達には関係ない」
「関係なくはないよ。みんな、仲間なんだから」

 それぞれの言い分があって、それぞれの立場がある。それをすべて通すことは、現状では不可能なのだ。それを分かって欲しい。そう言う翔に、露は口を一文字に結んでから、すぐに舌打ちして返す。

「分かった。もう一度、結崎のバカを説得してくる。これでいいんだろ?」

 うなずく翔。


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