第7章
崩れゆく砦
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 朝食の準備が整ったからと言われて広間へ行くと、翔は神妙な顔をした碧海から、外へ出たいのだと頼まれた。

「本当に、君達には申し訳ないと思っているよ。こんな所にずっと閉じ込められて、気分が優れなくなるのも当たり前だと思う」

 気が滅入って仕方がないのだと言う彼らの願い出に、翔は俯き気味に答える。

「だったら…」
「でも今は我慢して欲しい」
「えー」
「せめて新堂さんや潤也さん達が帰ってくるまで待っていてよ。それ程時間がかかる訳じゃないと思うから」

 紗和達のいない今の状態からして、浅葱達の思いに応えるのは実質的に無理なのだ。

 相手は自分達より力の勝る父竜だ。外へ出てうっかり出くわしてしまったら終わりだ。そう言う翔に、横から口を挟んだのは露だった。

「いいんじゃないか? ボディガードがいるんなら、オレ行ってやるよ」
「誰が行くとか、そう言うことじゃないよ」

 軽く言う露に、翔は困ったように返す。

 ここの陣を守らなければならないし、外も危険だし、これ以上の力の分散など翔には考えられなかった。それなのに、露は平気な顔だった。

「結崎の馬鹿も連れてってやるよ。まだ部屋にこもりっぱなしだしな。アイツも気分転換が必要だろ?」

 寛也の話を出されて、翔は返せなくなる。

 寛也は昨夜、自室へ引き上げてから全く顔を出さないでいた。朝食に呼んでも、こたえなかったと言う。潤也からもそっとしておいてあげてくれと言われていたので、そのままにしていたのだが、どうも気力が弱くなっているような気がして気になっていた。その彼の気持ちは、自分には痛いくらいに分かる。

「分かったよ。でも、4人全員は無理だよ。水穂くんとヒロ兄で守れる分だけ、2人までだからね」

 ため息ひとつついてみせて、翔は碧海に言う。

「おう。いいぜ。なー」

 碧海はみんなを振り返って同意を求めるのに、浅葱がうなずく。

「ただし、ヒロ兄が行く気になったらだけどね」

 そこが一番の難関だと、翔は呟きながら。


  * * *


「買い出しって、この前行ったじゃねぇか」

 締め切った部屋にひとり座したままの寛也は、無理やり部屋に入ってきた露にそっけなく言う。

「買い忘れがあるんだと」
「何だ?」

 聞かれて露は、一瞬返答に困る。買い出しと言うのはむしろ口実で、実際は外へ出て気分転換すると言うものなのだ。しかし、今の寛也に本当のことを言えば、ついて来るのを拒否されるに決まっていた。

 そこで咄嗟に口を突いて出た言葉。

「女の子用品らしいぞ。ホラ、月の物とか、イロイロあるからさー」

 後で知れたら怒られそうだと思ったが、しれっとして言い切った。

 寛也は思った通り、ポカンと口を開けたかと思ったら、すぐに赤くなった。


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