第7章
崩れゆく砦
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「これは…」
露に続いて広間に入ると、既に紗和と優が黙ってニュースを見ていた。この二人は寝ずの番をしていてくれたのだろうか。
二人の見るテレビ画面に目を向けて、そこに映し出される映像に、翔も潤也もギョッとする。そこには、とても日本のものとは思えないくらいに破壊された街が映っていた。
一体何があったと言うのか。瓦礫の積もるその光景に、かつて幾度か目にしたものと類似しているように思えた。都市直下型地震の跡だ。
驚く翔と潤也に気づいて、テレビを見ていた優が振り返る。
「原因は不明だそうだ。だが、上空から写した映像だと、はっきり分かる…」
丁度、ヘリコプターで取材したものだろう映像が流れ、優の言わんとするものが映し出された。
それは、まるで砂で作られた街を一本の太いロープを使ってえぐり取ったように見えた。知る者が見れば一目瞭然の、まさに、竜の尾を打ち払った跡だった。
明かに自分達だけに分かるように仕向けられていることに、誰もが眉をひそめる。
「時間は夜明け前。午前5時頃。お前らが帰ってきた頃だな」
「やってくれたぜ、あの野郎…」
憎々しげに呟く露。
どう考えても、父竜――揚の仕業だ。つまり、自分達と一戦交えた直後に行ったのだろう。翔達と同じく瞬間移動する彼からすれば、日本中のどこへ行くのもたやすいことなのかも知れない。
「どこです? ここ」
問う翔に、紗和は画面から目を逸らすことなく告げる。
「札幌。時計台が見える」
しかし、それも建物を折られて、その残骸を道路に転がしていた。
「北海道って…」
思わず紗和を見やる翔。
「言ってしまったからね、僕の出身地」
自分を裏切った紗和への戒めか、それとも彼はもう自分の目的を果たすつもりで動き出しているのか。
画面には死者と負傷者の数が大きく表示されていて、翔はその数の多さに怒りが込み上げる。
「亡くなった人達は助けられないけど、今生きて助けを待っている人は助けられるよね」
潤也が言うのに、翔がうなずく。