第6章
君がために
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頭上に広がる紅蓮の炎が、天を焦がしていくのが間近に見えた。
これでもかと、自分の力の限りの炎を吹き出しながらも、尚もまだ燃え続ける炎竜。もう、どうしたら良いのか分からず、ただただ、苦しんでいるのが手に取るように分かる。
自分もまた、同じ気持ちだったから。
「静川と凪の野郎が、あの中に取り込まれている。もうお前しかいないんだからな」
凪――潤也の気持ちも、翔は知っていた。いつも、そっと杳のことを見守っていた姿を見てきた。彼は、きっと傷心の気持ちを抱えて、それでも、寛也を助けようとしたのだろう。
自分より年若い竜達を統べるのは、自分の役目なのだ。
翔は見上げた天へ、右手をかざす。
銀色の光が再び翔の身体を包み込んだ。
天へ駆け上がった竜王に続いて、露もすぐに天を目指した。
石竜が追いついてくると、翔は振り返らずに言った。
『一旦、炎竜の息の根を止めるから、炎が薄れたら中の二人を引っ張り出して』
『え…? 息の根って…』
翔の言葉に口を挟もうとする露を無視して、翔は気の力を高める。それだけで、雷雲が天空に立ち込めてくる。
思わず身を引く露をよそに、翔は燃え盛る炎に向けて一条の雷(いかずち)を振り下ろした。
轟く雷鳴に、空気が震える。
閃光をまともに浴びて、炎竜は地面に叩きつけられた。が、それもつかの間、雷すらその身に取り込んだのか、炎竜は天空に向けて咆哮を上げる。
吐き出す炎が翔に襲い来る。
まともに浴びたらまずいと咄嗟に悟って、翔は身をかわそうとする。
と、その目の前に、月明かりを反射してきらめく鱗を持つ者が姿を現した。