第6章
君がために
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その寛也に、揚は呆れたように聞く。
「まだ逆らうと言うのかい? 彼はもう虫の息なのにね」
「黙れっ」
怒鳴り様、寛也は炎をまとった光球を揚にぶつける。揚は片手で軽くそれを跳ね飛ばした。
あらぬ方向へ飛んでいった炎は、遊園地内の遊具を破壊して燃え上がらせる。
結界で閉ざされた空間でもあるので、近隣への被害もないだろう。そう思って寛也は被害を気にせず、次々に炎を作り出しては揚にぶつけていった。
揚は煩わしそうにそれを払っていたが、一筋、避け損ねた炎が頬をかすめた。
わずかに走る痛みに眉をしかめて、揚は自らも光球を作り出す。
寛也は揚の光球を自分の炎の力で跳ね返そうと、前面に力を集中させる。
揚の光球が、寛也に迫る。それを迎え打つように、力を噴出す。
二人の異質な力の相殺が再び起こると思われたが、今度は相手との力の差があり過ぎた。
揚の竜気が大きかった分だけ、揚の力が寛也にまともにぶつかってきた。それを身に受けて、吹き飛ばされる寛也。
上空に弧を描いて飛び、地面に叩きつけられる。瞬間、息が詰まるものの、反射的に起き上がろうとして、右足に激痛が走った。
目を向けて、息を飲む。
壊れた遊具の破片だろうか、太い鉄の棒が太ももに突き刺さっていた。
「しまった…」
抜き取ってしまえば傷の修復もたやすい。が、そんな僅かな時間すら、揚が与えてくれる訳もなかった。
「消え去れっ」
叫ぶと同時に繰り出されるひときわ大きな光球。その力の質量に舌打ちする。まともに受ければただでは済まないだろう。
寛也は攻撃を何とか避けるために鉄棒を引き抜こうとするが、間に合わなかった。
眼前に迫る竜気に、そのままの態勢のまま、揚の攻撃を受けるしかないと、無駄な足掻きと知りながらも、身の周りに炎をまとった。
せめて、この魂と細胞のひとつでも残っていたら、自ら再生できるだろか。否、自分にそんな力はないだろう。だから、何とか受け止めるしかない。
揚の口角が上がるのが見えた。
来る――そう思って身構えた、その目に映るもの。
寛也の正面に、人影が立った。