第6章
君がために
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まぶしい閃光を伴って、特大の稲妻が潤也のすぐ脇を流れ落ちた。
身をかわすだけで生じる帯電。それに怯んだのは、自分だけだと気づく。
先に転身した竜王は、自ら先陣に立った。
竜神の中でも長兄であり、最も大きな身体を持つ竜王は、それでも父竜の前ではただの子竜でしかなかった。
比して、さらに小柄な自分や炎竜は、既に父竜の眼中にないのか、見向きもされなかった。いや、竜王が自分達を守って前に立つからこそだと、すぐに気づく。
咆哮をひとつ吐いて、竜王の身が火花を散らす。その身を振り払うようにして繰り出す電撃に、父竜は動じた素振りも見せずに正面から迎え撃つ。
竜王の雷(いかずち)は、父竜の同種の鱗にあっさりと弾き返される。
それを避けて、竜王は尾を振り上げる。
もう一度同じ攻撃をするのだと知って、潤也は無駄だと止めようとするが、その時、竜王の後方に炎竜の姿を見出した。
炎竜の身から溢れる炎の力にを見て、潤也も同じように風を巻き起こした。
雷は風よりも速い。さらに、風は炎よりも速い。一番に吐き出された炎の球に、潤也は風の力をまとわせる。吹き上がる炎のが風の勢いに力を増して速度を速めると同時に、雷光が竜王の身から繰り出された。
タイミングが本当に合うなどとは考えていなかったが、三体の力が合わさって、その光球は3倍もの大きさに膨らみ、父竜に最速でぶつけられた。
空が昼間のように明るくなる。それとともに巻き起こった爆風に、潤也は危うく飛ばされそうになるのを、風を蹴って何とか踏ん張る。
『おしっ』
寛也の声が聞こえた。
しかし、やがて晴れていく炎の影から現れたその姿にギョッとする。
命中した筈だったのに、そこに、何事も無かったように父竜は存在した。
『それがお前達の全力か?』
巨体を持て余すかのようにゆったりと身をくねらせて、まるでこちらを挑発するかのように脇腹を向ける。
『上等じゃねぇか』
飛び出していく炎竜。止める間もあらばこそ。竜王の脇を擦り抜けたと思ったら、父竜につかみ掛かった。
炎竜の身から炎が溢れだし、父竜を巻き込んで赤く天を焦がす。
『同じ手は二度と食わんよ』
そんな声が聞こえたかと思ったら、ひときわ大きな落雷が父竜ごと炎竜の上へ落とされた。
かん高い鳴き声が聞こえ、炎竜が地上へ落下していくのが見えた。
『ヒロッ』
潤也は寛也を追おうとする。その眼前に突如として現れる父竜。
『お前も地に伏せるがいい』
言葉が最後まで届かぬ間に、父竜の長い尾が横合いから風竜の身体を叩きつけてきた。
全身を打ちのめす力に、潤也は空中に止まっていられなくて地面へと落下していった。
危うく、炎竜の転身が溶けてしまった寛也の上へ落ちてしまいそうになるのを、咄嗟に風を巻き起こして自分の身を浮かせると、少し離れた所に着地した。
* * *