第6章
君がために
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その手に無造作に掴まれていた潤也は、ぐったりと首を垂れていた。服も身体も既にボロボロだった。
揚はその潤也を、荷物のように寛也達の方へ放り投げた。
寛也の元へ転がった潤也は、倒れた拍子にゴポリと血の塊を吐いた。
「ジュンッ!」
寛也はとっさに抱き起こす。その顔色は蒼白で、病弱だった頃の潤也を思い起こさせた。ぞっとした。
「ジュンッ、おいジュン、しっかりしろっ」
肩を揺すると、うっすらと目を開いた。ホッとする寛也に、それでも叱咤してくる潤也。
「早く逃げろと言ったのに…この馬鹿が」
呟くように発せられた言葉も苦しそうに綴られたのに、潤也は寛也の腕の中から離れて起き上がろうとする。それを押さえ込む寛也。
「翔、ジュンも頼む。俺は、こいつをやる」
言って、立ち上がった。
揚はそんな寛也を面白いものでも見るかのような目を向ける。
「今度はさっきのようにはいかないよ」
そう言って、左手を寛也に向けてニヤリと笑う。
途端、僅かに目線をそらしたかと思ったら、光球が寛也の脇を擦り抜けた。
「!?」
避ける間もなかった。寛也の脇腹をかすめた光球に、衣服が裂けて、脇腹に痛みが走る。
と同時に、衝撃音が後方から聞こえた。
反射的に振り返ると、そこに翔が両腕を広げていた。気のバリアを張って、揚の攻撃を受け止めたのだと知った。
その翔の足元が、力負けして少し滑っているのが見えた。
自分を無視して、明かに弱い杳を狙ったのだと知って、寛也は揚を睨む。
「てめぇの相手はこの俺だって言ってんだろっ」
「役不足ですよ、ヒロ兄」
寛也の横を抜けて、翔がその前に立った。
「ここは僕が引き受けます。ヒロ兄は潤也さんと杳兄さんを…」
「誰も逃がしはしないよ」
言うが早いか、周囲に結界が張り巡らされたのを感じた。この遊園地全体を取り囲むように、巨大な結界が作られたのだ。
「長男、三男、末子。お前達の戦力の半分を、ここで削ぎ落としてくれよう」