第6章
君がために
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「させるかっ」
防御は、元来得意ではない。自分の張る結界など父竜の攻撃に会っては、布切れ一枚の効果しかないだろう。
それならばと、寛也は光球の前へ身を晒した。それと同時に、瞬時に作り出したのは父竜と同じような光球だった。両手の平を使って作り上げた炎のそれは、形こそ同じであるが、性格は全く異質なものだった。寛也はそれを父竜の繰り出した光球にぶつけた。
衝突とともに、まばゆい光があふれ出て、辺りを昼間のように明るく照らした。爆風が僅かに起こったが、それを全身で受け止める。
「力の相殺か…。面白い。ならば…」
次に揚が作り出すのは、さらに大きな光球だった。
手のひらに光を集めながら、揚は寛也の顔を見てニヤリと笑う。寛也には跳ね返せないだろう程の物を作り上げるつもりで。力の差を思い知れとばかりに。
が、それが完成するよりも早く、寛也は飛び出した。
「悠長にやってんじゃねぇよ」
言いながら、そのまま揚に体当たりした。
人間体では自分より体格の良い寛也にぶつかられて、揚はバランスを崩して危うく転がりそうになった。それを何とか踏ん張り、手にしていた光球――瞬時にしてすぼんだが、まだ十分に形を止めていた――を寛也に至近距離からぶつけた。
とっさに受け身を取る寛也。が、力負けしてその態勢のまま、後方へ跳ね飛ばされた。
強かに全身を地に打ち付けてうめき声を漏らしながらも、寛也はすぐに起き上がる。
その目に、揚が杳に近づいていくのが見えた。
杳は未だにベンチの上で動けないまま、そこにいることさえも辛そうにしていた。
「僕がとどめを刺さなくても、すぐにでも死んでしまいそうだね」
愉快そうに言う揚を前に、杳は顔も上げられなかった。
「だけど、それじゃあ僕の気がおさまらないんだよ」
その手に、小さく光る球が見えた。
寛也は考えるよりも先に、身体が動いていた。
揚が近づくよりも先に杳の元にたどり着き、そのまま抱えて逃げ出す。
「無駄なことを」