第6章
君がために
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「あ、潤也さん」

 障子の開く気配に振り向いて、そこに潤也の姿を認めると、思わず浅葱は立ち上がった。

 無事だとは聞かされていたものの、怪我をして一晩は病院に泊まると聞いていて心配していたのだ。そんな浅葱に気づいて、潤也はにっこり笑顔を浮かべる。

「心配かけてごめんね。もう大丈夫だから」

 言われて、ホッとしながら浅葱は、隣に座っていた杳に声をかける。

「良かったですね、みんな無事で」
「…ん」

 杳は座卓に肘をついたままで顔を上げず、小さく返事をしただけだった。

 潤也に続いて翔と寛也も部屋に入ってきて、空いている座についた。

 既に全員が呼び集められていて、どれも神妙な顔をしている。どこか重苦しい雰囲気があった。

 数えてみると、13人。全員が席に着いて、しんと静まり返った部屋の空気に、一番に耐えられなくなったのは美奈だった。

「あ、あたし、お茶、いれてくるね」

 そう口走るが早いか、立ち上がり、パタパタと足音をさせて部屋から出て行ってしまった。その後を黙って百合子が続いた。

 碧海が美奈の座っていた向こうの席で、逃げ損なったように困った顔を向けていて、浅葱は大きくため息をついた。空気が悪い気がするが、さすがにこの面子で仕切るつもりは自分にはなかった。

 潤也を見やると、押し黙ったまま、斜向かいに座る翔と紗和を目だけで交互に見比べていた。彼もまた、仕切るつもりはないようだった。

 この場を一番うまく纏めてくれそうな潤也が口を開かないのならばと、仕方なく浅葱がこの気まずい沈黙を打ち破ろうとしたその時。

「紗和、自己紹介くらいしたら?」

 だるそうに口を開いたのは杳だった。しかし、それだけ言うと、すぐに顔を背けてしまった。

 杳の声に、明らかに室内全体の空気が変わったように思えた。碧海達の言う「杳さんハーレム」の意味が飲み込めた気がした。

「あ、うん、そうだね。初めて見る顔もあるみたいだし」

 紗和はそう言って、ぐるりと全員を見回した。

 人の良さそうなお坊ちゃん風のその顔は、しかし溢れ出る威圧感を隠せなかった。

「僕は新堂紗和と言います。金色地竜王。実名は地人。天竜王天人とは同時に生を受けた、竜達の次兄にあります」

 後半は浅葱達に向けてだった。自分達をちゃんと認識してくれているのが、浅葱には少し嬉しかった。

 が、そんなことは知っていると、紗和からは翔を挟んだひとつ隣に座る露が呟く。

「んで、何であんたがいるんだ? 敵についたって聞いたけど」

 露の問いに、紗和は苦笑を浮かべる。

「正攻法じゃ敵わないと思ったからね」
「味方についたと見せかけて、寝首でも掻くつもりだったんでしょ?」
「でも、そんなことはとっくに見破られていたけど」


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