第6章
君がために
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「そっか。新堂くん、戻ってきたんだ…。杳も無事なんだね」

 病室のベッドの上に座って、翔の話を手短に聞かされた潤也はホッとしたようにそう呟いた。

「それで、潤也さんを呼んできて欲しいって」
「こんな夜中に?」

 寝静まった病棟にいきなりやってきた理由は知れていたが、潤也はわざと意地悪く言う。

「これから話し合いでもする気? 一体何時だと思ってるの?」

 実際、窓の外から差し込む月の光は、しっかり西に傾いていた。

「でも、陣営を固めるって、新堂さんが…」
「翔くん」

 ため息ひとつついて、潤也は翔を見やる。

「こちらのリーダーは君だよ。新堂くんは守りの要だけど、戦いの指揮をとるのは天竜王でなければならない」

 そう言われて、翔はわずかにうつむく。

「僕はその器じゃありません。みんなを纏めるんだったら、むしろ潤也さんの方が適任です」

 つい夕刻の苦い思いがよみがえる。自分に従ってくれない仲間たちに、どう対処すれば良いのか分からなかった。

 それに、自分には決定的なことが欠落しているのだ。仲間を守りたいという気持ちよりも何よりも、優先されるものがあるから。

 そんな翔の心情を読み取ったのか、潤也はため息ひとつついて言う。

「ヒロ一人でも手を焼くのに、全員の面倒なんて見てられないよ」
「でも…」

 反論しようとする翔を遮る。

「僕は口出ししないから、君達二人で方針を決めて。僕はそれに従う」

 きっぱり言う。

 口をすぼめて不服そうにする翔。立ち上がって、その肩をポンと叩く。

「それに僕はあの暴れん坊達を束ねないとね」

 竜王が全力で戦えるように、その両翼を担おう。それでも多分、自分達に勝ち目などないかも知れないが。

 もしかしたら、明日さえもないのかも知れないが。


    * * *



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