第5章
神を封じる者
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 寛也の力しか受け入れない杳の身体。寛也がここで倒れてしまったら、杳はどうなるのか。

 いや、多分、大丈夫。翔も潤也もいるのだ。今度はきっと紗和も力になってくれるだろう。

 だから、自分のこの力は杳を守る為に使おう。

 絶対に守り抜く。

 そう決意して、寛也はゆっくりと身を浮き上がらせる。

『まだ起き上がる力が残っているのか…』

 巨大な竜は炎竜の身体の周囲を取り巻いてもなお余る身体で、天を覆い尽くす。

『ぬかしてんじゃねぇ。消滅させるなんて言いやがって、末っ子の俺一人にてこずってるなんかお笑いだぜ』

 寛也の挑発に、父竜の気が一気に上昇したが、寛也は気づかぬようにそのまま続けた。

『分かってんだぜ。俺達が成長した分、てめーはくたびれてんだろ? 俺達が束になっても敵わなかったなんて何千年の昔の話だ。とっとと引退しやがれっ』

 叫んで、寛也は父竜の懐に飛び込んだ。

 吐き出す炎は、全身の鱗の隙間と言う隙間から吹き上がる。

 身を引こうとする父竜の腹にしがみついて、寛也は爪を食い込ませた。

『てめーの腹が焼き尽くされるのが先か、俺が燃え尽きるのが先か、勝負だ』

 舌打ちするのが聞こえた気がした。きっと腹は急所なのだろう。そんなことが頭の中を過ったのも一瞬のこと、炎竜は炎を更に吐き出した。夜空が、炎に包まれる。

 業火に焼かれる父竜は身をよじって、何とか炎竜を引きはがそうとする。しかし、もがく度に炎竜の爪は腹の肉に食い込んでいった。

『おのれぇ』

 怒りに震えるのが、伝わってきた。途端、炎竜の後ろ首に激痛が走った。噛みつかれたのだ。

 父竜はそのまま炎竜を引きはがそうと顎を引く。

 ギリギリと音を立て、炎竜の爪によって引き裂かれる父竜の腹が、気の血を飛び散らせる。

 首を噛まれた炎竜は父竜の腹から引きはがされ、そのまま地面に叩きつけられた。飛び散る炎が周囲の山を焦がしていった。

 炎竜は赤い血のしたたる首をもたげて、相手を見やる。未だ天を舞うその姿は、しかし苦しげに声を上げていた。

 もう一度と、寛也が飛び立とうとしたその時、目の前を青い翼が擦り抜けた。


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