第5章
神を封じる者
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寛也達が降り立ったのは、都心から離れた緑深い山の中だった。
「ここに父竜のアジトがあるのか?」
竜身を解いて、寛也は辺りをキョロキョロと見回しながら佐渡に聞いた。
そこは高台になっていて、見晴らしの良いところだった。ふもとの方に幾つかの民家が木立の隙間から見えたが、周囲には他に人通りすらなかった。
父竜が杳の言っていた明日香揚なのだとしたら、こんなところから大学に通っているのだろうか。いや、大学の位置はどちらだったろうか。すっかり方向感覚のなくなった寛也はキョロキョロと周囲を見回す。
「アジトもアジト。本拠地だぜ。別邸だけどな」
「はぁ?」
佐渡の言葉に眉をしかめて、寛也は先に歩き始めた彼を追いかける。優は黙ったままでその後に続いた。
車1台が通れる程度の道は舗装はされているが、通行量は少ないものと思われた。その道を、上へと上っていく。
「大したお坊ちゃんらしくて、親から別邸を買い与えてもらってる。そこを根城にしてるんだ」
寛也は、そう言う佐渡も黒塗りの車を校門に横付けさせているのを幾度か見たことがある。寛也からすれば、似たようなものだと思われた。
やがて木々の間から屋敷と呼ぶにふさわしい家が現れた。
先程の佐渡の家に比べれば小ぶりだが、それでも寛也の知る一般家庭の一戸建の平均よりははるかに大きく見えた。これが別邸だと言うのなら、本宅はどれ程のものなのだろうか。
唖然として見る寛也に、その背を叩く佐渡。
「おい。お前のその気配、何とかならねぇのか?」
言われて寛也は自身の身を顧みる。
「気配って…?」
「竜気だ、竜気。お前、ビンビンに立ちのぼってるぜ。その気配だけで、ヤツには丸分かりだ」
以前はこんなにもなかったのにと、佐渡は首を傾げてみせる。
「そんなこと言われても、何をどうすりゃいいんだ?」
「気を静めるんだ」
寛也の呟きに答えたのは優だった。