第5章
神を封じる者
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ここで拒否すれば、協力が得られないかも知れない。こんな自分の我が儘で杳を助けられなくなったら、どうしたら良いのか。
一番大切なのは杳だ。その命を守る為なら、仕方ないのだろうか。しかし、杳の気持ちは――。
「アイツがお前を選ぶと言うなら、邪魔はしない。だけど、杳はお前を選ばねぇよ、絶対に」
「大した自信だな、結崎」
佐渡は寛也の真っすぐな目に、諦めたように寛也から離れ、ソファに腰掛ける。
それからふと、寛也と同行してきた優に目を向けた。
優は二人の口論には興味無さそうに顔を背けたまま、出されたコーヒーをすすっていた。
「こいつは誰だ?」
「ああ…光竜だ。大将が連れて行けって」
突っ立ったままで答える寛也。
「光竜…弓月(ゆづき)か」
「杉浦優だ」
そう名乗る優はまだ相手を吟味しきれない様子で、佐渡を睨む。
佐渡はその優から目を逸らして、突っ立ったままの寛也を見上げる。
「戦況を報告してもらおうか」
「手を貸してくれるのか?」
「当たり前だろ。ホレた相手を救えないようじゃ、男じゃねぇだろ」
嫌われていると分かっていても、杳のことを好きだと言ってはばからない佐渡。それに比べて自分は、ほんの少し杳が翔のことを思っていると知っただけで、あんな態度を取ってしまった。雛だ、子どもだと言われても仕方がない。
本当に、何も分かっていないのは自分の方だと思った。
「恩に着る」
そう言ってもう一度頭を下げる寛也に、佐渡は心地悪そうに舌打ちした。
* * *
「かなり不利だな」
一通りの説明を聞いて、佐渡は呟くように言った。
「残る詩弦(しづる)を味方につけても、烏合の衆には変わりねぇ。これだけで戦えると踏んでいるのか、あのチビは」
腕組みして考える佐渡に、反発するように答えるのは優だった。
「お前に烏合の衆呼ばわりされる覚えはない」
その優がまだ何か言いたそうにしているのを、佐渡はチラリと見やる。
「説教垂れるなよ。俺は事実を言ったまでだ。要はどれだけ心意気が高くても、勝てなきゃ意味がねぇ。無謀に突っ込んで返り討ちに会うより、姑息な手段を使ってでも敵を叩き潰す。そうだろ? だから俺の所に来たんだよな、結崎」
この正義感の塊の直情型人間に、とてもそれができるとは思えなかったが。
思った通り、寛也はあからさまに嫌悪の色を浮かべる。