第5章
神を封じる者
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「だってほら、初めて会った日、寛也さんって杳さんの部屋のベッドで寝てたんでしょ?」
「あー、そう言えば二階を気にしてたなぁ、杳さん」
実際は、そのまま寛也を放置して浅葱の救出の為、勾玉を探しに出掛けたのだった。
「杳さんって、あまり人を寄せ付けたがらないじゃない? その杳さんの部屋でグーグー寝込んでも許されてる寛也さんって、多分、すごく仲良しなんじゃないかなぁ」
美奈の言葉にハッとする碧海。
「まさか寛也さんまで、杳さんハーレムの一員なんてこと…」
そう言った碧海と美奈は顔を見合わせる。
それから、一拍置いてから、互いにぷっと吹き出した。
「ないないない、これだけは」
「寛也さんて、恋愛事に疎そうだしね」
そう言って笑い飛ばす二人を、浅葱は呆れた顔で眺めていた。
いつの間にこのキッチンが井戸端会議場になったのだろうか。しかも、人の色恋沙汰に花を咲かせるなんてと呆れながら。
その浅葱に、百合子が声をかける。
「ま、それはそれとして。解せないのは、竜王が杳さんの救出に炎竜を選んだ理由よね」
「え?」
食事の後にはこれが必須と言って、夜なのにコーヒーをマグカップで飲んでいる百合子に目を向ける。
「地竜王も風竜もいない、守りが手薄なここを守るのに天竜王が結界を取り仕切ると、次に攻撃の要となるのが炎竜よ。正面きって戦うのが今回の作戦じゃない以上、これは明かな人選ミスよね」
ここまで言われては翔も立つ瀬がないだろうと、浅葱は気の毒に思う。元々百合子は翔のことを快く思っていなかったので、こんな口ぶりになるのだろう。それもこれもあみやのことを思えばこそなのだが。
「確かにね。寛也さんには不向きかも知れないけど。でもきっと何か理由があるんだよ」
翔の、寡黙で思慮深い人柄を思い起こして浅葱は言う。
と、言葉尻だけを耳にして話に加わってくる輩。碧海だった。
「じゃ、やっぱり杳さんハーレムの一員なのかなぁ」
「いや、だから、それは…」
浅葱が否定しようとするよりも先に、碧海は百合子に頭を叩かれた。
「一生言ってなさい、この色ボケがっ」
* * *