第5章
神を封じる者
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寛也はそう言って、翔と露に背を向ける。
「水穂、お前は残ってろ」
「えー? オレが言い出しっぺなんだぞ。オレも行くよ」
寛也の前に回り込んで睨むように見上げる露。その頭をポンと平手で叩いて寛也は言う。
「お前はここを守ってろ。四天王三人いなくなるのはマズいだろ」
「だったら結崎が残れよ」
「俺は行くって決めたんだ」
互いに睨みあって引こうとしない二人に、翔は諦めたように大きくため息をつく。
「もう…」
きっとこの二人――特に寛也には、もう何を言っても聞かないだろう。杳のことではあるし。
本当は自分が助けに行きたいが、杳が望んでいるのは寛也なのだと、翔には分かり過ぎる程分かっていたから。
「分かりました。でも二人ともに抜けられると困りますから、水穂くんは残って」
「えーっ、何でー?」
不平をこぼす露を無視して、翔は寛也に向く。
「ヒロ兄は杉浦さんに一緒に行ってもらうよう頼んでみてください。単独行動は控えて欲しいので」
「杉浦って…光竜か?」
「ええ。彼ならきっと役にたちますから」
戦力的にどうなのかと思ったが、翔が言うのならと、寛也は渋々承諾した。
* * *
「これまたフェイントなことを」
杳の救出の為に翔が送り出したと聞かされたのが、寛也と優の二人だと言うことに、碧海が首をかしげた。
自分が出ていくのならまだしも、この二人の組み合わせである。
「あ、でも寛也さんと杳さんって、仲良しでしょ?」
そう言う美奈に、碧海は眉を寄せる。
「そうかも知れないけど…」
碧海には、どちらかと言うと二人は悪友っぽく見えるのだった。二人で悪戯をしては一緒に叱られる間柄のようだと思っていた。悪く言えば悪友のような関係だと。
そう言う碧海に、美奈は思い出したように言う。