第5章
神を封じる者
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「えー、いいじゃん。オレ、純戦闘系だから、ここにいても役に立たないしィ」
「ダメだよ。今は非常時なんだから、大人しくしておいてよ。もうっ、潤也さんもいないのに」
出かけようと廊下を歩いていると、そんな声が聞こえた。露と翔のものだ。
そう言えばここは翔の部屋だったかと思う寛也の目の前、突然に障子が開かれた。
「ならいいよ。オレ、戦線離脱ね。仲間リストから外しておいて」
「ちょっと、水穂くんっ」
露は部屋を飛び出して、丁度そこに突っ立っていた寛也に危うくぶつかりそうになって、慌てて体勢を整える。
先程のことをまだ怒っているのか、寛也を睨み上げてくる。
「ヒロ兄、止めてください。水穂くん、杳兄さんを助けに行くって言うんです」
困ったように言う翔は、やはり潤也のように仲間を統べる力はないのだろうか。
潤也ならば、ピシャリと言い放ってしまうことだろうに。
「当たり前だろ。守ってるお姫様をかっさらわれたのに、取り返しに行かなくてどうするんだよ」
「そんなこと分かってるよ。だけど相手は父竜なんだよ。正面からぶつかってどうにかなるってものじゃないだろ」
珍しく声を荒げるこの翔の思い人も杳なのだ。本来なら何を置いても杳を助けに行きたいだろうものを、彼はここから動けなくなってしまったのだ。この結界を他に守る者がいないことを危惧して。
だからと言って、他の者達に杳を助けに行くと言う大役を任せることもできずにいたのだ。
「正面がダメなら、裏口から忍び込めばいいだろ?」
そう言った寛也の言葉に、露ははっとして顔を上げる。
「佐渡とか、何か良い情報、持ってんじゃねぇか?」
「ヒロ兄、何言って…」
慌てる翔を後ろへ追いやり、露は嬉しそうに返す。
「だろー? こっそりさらわれたんだから、こっそり取り返せばいいんだよ。何も父竜と正面きって戦わなくてもさ」
「こっそりって…」
翔は頭を抱えてしまいたかった。術も使えず、力任せの戦い方しか知らない二大巨頭が何を言うかと。そんなことを言っている間に、自分の気配を消す技能でも身につけておけと言いたかった。
「悪いな、大将。俺、行くぜ。お前は杳の集めた勾玉、守ってろ。勾玉は綺羅のお守りなんだからな」
「ダメですよ。もう少しちゃんと作戦を立てて。せめて潤也さんが帰ってくるまで…」
「すぐ帰って来るんじゃねぇのか? ほぼ完治してたし。明日には退院だぜ」
聖輝も治癒に加わって、尚且つ潤也自身が自分で自分の身体を治癒させる力に長けているのだ。寛也達が帰る頃には、元気に動き回っていたものだった。
そのまま入院したのは、下手に騒ぎを大きくしたくなかった為である。ついでに夜のうちに関係者の記憶操作もしておこうと言うものだった。
「だったら、せめて明日まで待ってください。そうしたら僕が…」
「冗談じゃねぇぜ。ジュンが帰ってきたら、行けるものも行けなくなっちまう」