第5章
神を封じる者
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「オレのこと聞いたって仕方ないだろ。でも安心してよ。あんたじゃないってことだけは確かだから」
「そうかい」
揚はまた笑みを浮かべる。
「だったら、面白い実験をしてみるかい?」
「実験?」
「人は容易に他者を裏切ると言う実験だよ」
顔を覗き込んでくる揚に、杳はまた身を引く。
「オレは裏切ったりしない」
「そうかい?」
揚はまた薄く笑う。
それとともに繰り出す術の影に気づいて杳は逃げようとするが、その前に腕を掴まれた。
「人の使う薬は身体に影響が残る。ただでさえ短命なものを、そんなことはしたくない。だけど僕の使う術はね」
ふわりと、身の周りの空気が揺れるのを感じた。
「な…に…?」
杳の身体を包み込もうとするものがあった。先程切り裂かれた傷が癒えていくと同時に、何かが身体に入り込んでくるような感覚がした。
指先から、皮膚から、全身から、それが杳の中に入ってくる。
「僕の竜気だ」
この感覚には覚えがあった。寛也と身体を重ねた時にも感じた。もしかしてと思って身を引こうとしたが、既に動けなかった。
「竜族がどうやって子を成すか知っているかい? 人間で言う所の肉体とは次元の異なる身体を持つ僕達はね、人の身体の細胞のひとつひとつを変化させ、竜の性質に近い疑似肉体を作り出す。その肉体に、精を埋め込むんだ。君の今の外見が男であっても女であっても、関係ないんだよ」
揚の腕に抱き寄せられて、杳は気が遠くなりそうだった。その杳に、揚はぞっとするような事を告げる。
「君の身体に僕の精子を植え付けてあげよう。天人達も、そうして生まれたんだ」
次第に自分の身体の中で変化していくものを感じた。
嫌悪感に、吐き気と目眩がした。
全身の力が抜け落ちていく。
「僕に見合った身体にしてあげるよ。そして、僕の為に新しい命を生み出すがいい」
「や…いや…だ…」
小さく呟く声しが出せなかった。それを見て、耳元で笑う揚。