第5章
神を封じる者
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気持ちを改めて、浅葱は一同を見回す。
「とにかく今は相手の出方を待つしかないでしょう」
「何言ってんだ。もうひとつ方法があるだろ」
露は口調を改めない。
「敵に乗り込んで、奪い返すんだ」
きっぱり言って、全員を見回す。その中で、寛也に目を止める。
「結崎、一緒に来るか?」
「いや…」
即答の寛也に、露はあからさまにため息をつく。
「ったく、どいつもこいつも、ホントにやる気あるのか?」
「僕が行くよ」
そう声をかける者がいた。それまでうつむいたままだった翔だった。
「杳兄さんは僕が取り返してくる。みんなは手を出さないで」
「いきなり全面戦争か? それも構わんが、一人で勝てると思っているのか?」
聖輝が冷静な声で問うのに、翔は自嘲気味に返す。
「勝とうなんて…」
そんな自信はなかった。力の差があるのは歴然だ。たとえ相手が封じられていても、本気になれば、多分翔には勝ち目はない。
そんな翔に、浅葱が遠慮なく言う。
「元々の君の参戦の理由は杳さんってことだろ?」
「やっぱりハーレム…」
そう言った碧海は、とうとう美奈に首を締められた。そんな二人を尻目に浅葱は続ける。
「君の力は確かに強いよ。誰よりも。でも、だからって敵の本拠地に単身乗り込んたんじゃ、無事ではいられないよ、きっと。下手をすると杳さん、巻き込まれるよ」
浅葱の言葉に、二年前のことが思い起こされる。
人間の身体はあまりにも脆い。今度同じようなことがあれば、命の保証もない。ましてや、今の杳の身体は――。
「…今は相手の出方を待てって?」
「分かるよね?」
「君たちもそれでいいんだ?」
頷く浅葱に、翔は肩を落とす。
「そうか…」
それ以上、翔は何も言わなかった。