第4章
竜の血筋
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「あーもうっ、つまーんないっ」

 そうひとりごちて、杳は見ていたテレビの電源を切った。

 平日のこの時間帯の番組は見慣れない為か、全然面白くなかった。

 一人でいる時の病院は退屈だ。

 誰か家からゲーム機でも持ってきてくれればよいのにと思うものの、母親がそんなことをしてくれる筈もなく、かと言って翔に頼むのも何となく気が引けた。何と言っても、大変な身であるのだから。

 それにしてもと、杳は思い起こす。

 自分の中にある勾玉が魔の物を封じる力を持つことは知っていたが、他にもこんな使い道があるとは驚きだった。

 竜達のように、自分の怪我を治癒する力があるとは。

 傷を負った時は無意識でやったのだが、こんな力が元々自分にある筈はないのである。だから勾玉の力だと思った。

 しかし、勾玉は本来「御守り」なのだ。傷を負わないように身を守ることはしても、傷を治癒する力とはどこか違うように思えた。

 むしろ、この力は寛也達竜の持つ力のように思われた。もしかしたら、何度となく寛也の力を受けている間に、その力を得てしまったのだろうか。

 真実の程は分からないが、どちらにしても都合が良すぎるような気がして気持ちが悪かった。

 ぼんやりと考えていると、ドアをノックする音がした。

「はいーっ」

 カギなどかかっていないので、返事をするとすぐにドアが開かれた。翔か誰かが見舞いに来たのだろうと思った。

 が、そこから入って来たのは、思ってもない人物だった。

「揚…先輩…」

 それはまさしく明日香揚――父竜だった。

 思わず身をこわばらせる杳。

 ここは翔が結界を張っていたはずである。それがまるで効かなかったようだった。

 翔との力の差は、こんなにもあるのだろうか。

「2−3日見ない間に、大変だったようだね」

 しれっとして言う揚に、杳は険のある目を向ける。

「よく言うよ。あんたの仕業だろ、あのあみやは」

 肯定の言葉を返す代わりに、揚は杳に真意の見えない笑みを向ける。

「何のつもりだよ。あみやなんて動かして」
「君もあそこに来たっていうことは、あの身体に用事があったんじゃないのかい? あみやをして、僕を封じようとでも思いついたか」

 杳の表情に、揚は図星を突いたことを知る。


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