第4章
竜の血筋
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「っていうわけなのよ」

 とりあえず役割分担をしようと言う話で、巫女達は何もすることができないので、食事係を買って出るしかなかった。その為、大人数の夕飯を準備している最中のことだった。

 その間を縫って、出かけていた翔達の様子を偵察に行ってくると言って出て行った美奈が、報告とばかりに帰って来て、百合子と碧海にその内容を告げた。

 実は、美奈は隣の部屋で寛也達の会話を立ち聞きしてきたのだった。

 彼女の報告に、聞き役だった百合子は首をひねる。

「読めない行動を取るわね、彼も。さすが従兄弟」
「ハーレムはいいけど、あんま、男にばっかりモテてもなぁ」

 とは、碧海。

 少しの勘違いに気づかずに、すっかりそういう話になっている三人だった。

「あれ、みんなこんな所にいたんだ?」

 三人が首をかしげているそこへ顔を見せたのは、浅葱だった。宮崎から帰ってきて、自室で少し休憩していた筈だった。

 積もる話もあるからと優を引っ張っていったのだが、話も終わったのだろうか、浅葱は仲間達3人が集うお勝手場に、優の分まで湯飲みを片付けに来たのだった。

「おわっ、びっくりした。誰かと思うじゃない」

 美奈が大袈裟に驚いた。とんでもない話を聞かれるところだったと言って。

「何の話してるの?」

 にこにこと笑みを浮かべている浅葱に、碧海が耳打ちする。

「お前、聞かない方がいいぞ。卒倒するかも」
「は?」

 しかし、黙っていられる美奈ではなかった。

 知らないとあらば聞かせてあげようとばかりに、口を開く。その様は、明らかに楽しそうだった。

「あのね、杳さんを挟んだ天竜王と風竜の三角関係についてよ。ま、杳さん美人だし、仕方ないんだけど、噂じゃ地竜王も加わってるんじゃないかって話なのよ。みんなしれっとした顔をして、実は水面下で壮絶なバトルを繰り広げているらしくて…」
「あ、あの…」

 遠慮がちに、浅葱は美奈の言葉を止めようとする。

 が、そんなものは美奈には通じない。

「今のところ奥手な連中ばっかだから、同一ライン上にいるらしいんだけど、でも相手が悪いわよね。あの杳さんじゃ、誰にしたって食われてしまうし、下手をすりゃ上下が逆になりかねないって、もっぱらの…」

 ここまでしゃべって、ようやくに美奈は浅葱の背後にもう一人いることに気が付いた。

 真っ赤になってうつむいている彼は、話題の人物のうちの一人、翔だった。

「暇なのは分かるけど、お願いだからそのこと、杳兄さんに面と向かって言うのはやめてよね。家出するから、あの人」
「ごめんなさーい」

 同じように真っ赤になって、冷や汗ダラダラの美奈だった。


   * * *



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