第4章
竜の血筋
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 その横で気遣わしげに、潤也が尋ねる。

「守りも僕一人じゃ、どうにもならないんじゃない? 他の手を借りてでも烏合の衆には変わりないよ。本当は新堂くんが戻って来てくれるといいんだけど」
「…ヒロ兄と水穂くん以外、全員守りについてもらいます。それでしのいで下さい。歌竜は僕が何とか見つけますから」

 何でも自分で背負い込んでしまおうとする翔の態度に、危ういものを感じずにはいられなくて、寛也と潤也は顔を見合わせる。

「勾玉を絶対に渡してはいれないから。何としても守らなきゃ…」
「…翔くん」

 何と声をかけて良いものか、潤也は名を呼んで、言葉を詰まらせる。

 そんな潤也の心情を見抜いたのか、翔はさっと話題を切り替える。

「そうだ潤也さん、杳兄さんの様子、見て来てくれますか?」
「えっ?」
「本心の所、ダブル戦闘でちょっと疲れました。先に休みたいんです。でもほら、あの人って目を離すと何をしでかすか分からない所があるでしょ? 定期的に監視しておかないと」
「僕…?」

 いきなり言われて、潤也は寛也を見やる。

 寛也はわざとらしく目を背け、あさっての方向を向いたまま言う。

「たまには外へ出て来いよ。お前もここに籠もりっぱなしじゃ、ストレスがたまるんじゃねぇか? ただでさえワガママな連中に付き合わされているんだから」
「でも、ヒロ…」
「お願いできますか? もし脱走でも計ろうものなら、殴ってきていいですから」

 翔から妙なお許しまでもらってしまったが、まだ、困惑の色を隠せない潤也。

「お願いしますね」

 翔は潤也にそう言うと、飲み干した湯飲みを持って立ち上がった。


   * * *


「ちょっと、ヒロ」

 さっさと話を切り上げて部屋へ戻ろうとする寛也を、廊下で潤也は呼び止めた。

「さっきの、何?」

 立ち止まらない寛也に、潤也は追いついて腕を掴む。

「何って?」
「惚けないでよ。杳と喧嘩でもしたの?」
「別に。普通の友達でいろって言ったの、お前だろ? 俺はその通りにしてるだけだ」

 言って、潤也の手を振り払う。

「だからってヒロ、全然杳の所に行ってないだろ? ヒロだって心配じゃないの? 杳、きっとヒロのこと待ってると思うよ」
「待ってねぇよ」

 また背を向ける寛也に、潤也は眉の根を寄せる。

「あいつの待ってるのは、俺じゃねえ…」
「何言ってんのさ? いつもいつも…」

 どれだけ諭してやろうかと思った時、襖の影から人の息遣いを察知した。その中に興味本位の気配が感じられて、潤也は思い止どまる。

「じゃ、分かったよ。お言葉に甘えて、行ってくる。この際だから、思いっきり点数をかせいでくるよ」

 寛也の背にそう声をかける。

 寛也の背が少しだけ揺れて、そのまま歩き出した。

 本当に手間ばかりかかると、ため息ひとつついて、潤也は杳にどう取り繕おうかと考えを巡らせた。


   * * *



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