第4章
竜の血筋
-2-
2/7
その横で気遣わしげに、潤也が尋ねる。
「守りも僕一人じゃ、どうにもならないんじゃない? 他の手を借りてでも烏合の衆には変わりないよ。本当は新堂くんが戻って来てくれるといいんだけど」
「…ヒロ兄と水穂くん以外、全員守りについてもらいます。それでしのいで下さい。歌竜は僕が何とか見つけますから」
何でも自分で背負い込んでしまおうとする翔の態度に、危ういものを感じずにはいられなくて、寛也と潤也は顔を見合わせる。
「勾玉を絶対に渡してはいれないから。何としても守らなきゃ…」
「…翔くん」
何と声をかけて良いものか、潤也は名を呼んで、言葉を詰まらせる。
そんな潤也の心情を見抜いたのか、翔はさっと話題を切り替える。
「そうだ潤也さん、杳兄さんの様子、見て来てくれますか?」
「えっ?」
「本心の所、ダブル戦闘でちょっと疲れました。先に休みたいんです。でもほら、あの人って目を離すと何をしでかすか分からない所があるでしょ? 定期的に監視しておかないと」
「僕…?」
いきなり言われて、潤也は寛也を見やる。
寛也はわざとらしく目を背け、あさっての方向を向いたまま言う。
「たまには外へ出て来いよ。お前もここに籠もりっぱなしじゃ、ストレスがたまるんじゃねぇか? ただでさえワガママな連中に付き合わされているんだから」
「でも、ヒロ…」
「お願いできますか? もし脱走でも計ろうものなら、殴ってきていいですから」
翔から妙なお許しまでもらってしまったが、まだ、困惑の色を隠せない潤也。
「お願いしますね」
翔は潤也にそう言うと、飲み干した湯飲みを持って立ち上がった。
* * *
「ちょっと、ヒロ」
さっさと話を切り上げて部屋へ戻ろうとする寛也を、廊下で潤也は呼び止めた。
「さっきの、何?」
立ち止まらない寛也に、潤也は追いついて腕を掴む。
「何って?」
「惚けないでよ。杳と喧嘩でもしたの?」
「別に。普通の友達でいろって言ったの、お前だろ? 俺はその通りにしてるだけだ」
言って、潤也の手を振り払う。
「だからってヒロ、全然杳の所に行ってないだろ? ヒロだって心配じゃないの? 杳、きっとヒロのこと待ってると思うよ」
「待ってねぇよ」
また背を向ける寛也に、潤也は眉の根を寄せる。
「あいつの待ってるのは、俺じゃねえ…」
「何言ってんのさ? いつもいつも…」
どれだけ諭してやろうかと思った時、襖の影から人の息遣いを察知した。その中に興味本位の気配が感じられて、潤也は思い止どまる。
「じゃ、分かったよ。お言葉に甘えて、行ってくる。この際だから、思いっきり点数をかせいでくるよ」
寛也の背にそう声をかける。
寛也の背が少しだけ揺れて、そのまま歩き出した。
本当に手間ばかりかかると、ため息ひとつついて、潤也は杳にどう取り繕おうかと考えを巡らせた。
* * *