第4章
竜の血筋
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「僕の現世のこの人間の身体には、その綺羅の血が流れています。そしてあなた自身の本来の身体の中に流れる血も」
揚は翔のこの言葉に目を剥く。そして、考えもしなかった言葉に愕然とする。
「僕は綺羅を愛していました。ずっと、彼女が幼い頃から」
ずっとずっと見守ってきた。
綺羅の再来と言われたあみやを慈しんだのも――。
しかし、半分が人の血の混ざった天竜王との間に生まれたのは、やはり人の形をした子だった。
「この意味が分かりますか? 僕のこの身体には、あなたを封印する者としての血が流れているんです」
揚の目が鋭く見開かれ、翔を射止める。翔は構え、その一瞬間に揚の気が翔を襲う。
寸でのところで避けて、翔は呪文をつぶやく。
実態を現す銀剣。翔はそれを手に地を蹴り、揚に切りかかる。
が、うまく避けられる。続けてなぎ払う剣も避けられる。しかし、その風圧に揚の腕に血筋が走った。
「ばかな…っ!」
裂かれた痛みに腕を押さえ、揚が目を見開く。
「ご自分が半覚醒だということを忘れていませんか?」
鞘のない剣を手にしたまま、ゆっくりと翔が近づくのを、揚は忌ま忌ましそうに見やる。
その時。
「翔っ!」
聞き慣れた声がした。反射的に振り返ったのは一瞬のこと。その隙に、揚はスッと姿を消した。
本当にあっと言う間のことだった。
「しまった…」
小さく舌打ちする翔に、駆け寄るのは寛也だった。
翔の気を追って何とかたどり着いたのだろう。自分を心配してやってきた彼の行動をいさめることは翔にはできなかった。
「お前、これは一体…」
辺りの惨状に、寛也は眉をしかめる。
「僕がやったんじゃありませんよ。それよりも」
翔は寛也に肩をすぼめて見せてから、辺りに目を走らせる。
弱々しいが、確かに存在する気。そのわずかな気を追う翔。
そして、瓦礫でできた陰に見覚えのある顔を見つける。木竜――天野松葉だった。
「立てるかい?」
翔はその彼に手を差し伸べた。