第4章
竜の血筋
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「別にね。君たちも決して仲が良いとは言えないと思ってね」
「貴方に似て、みんな我が強いですからね」
そうだろうと、楊はどこか楽しそうに呟く。
「それで、君も僕に敵対すると言うわけかい?」
「あなたの目的が人界の滅亡だと、本気で言うのでしたら」
「それ以外に何がある?」
口調が変わった。
意外にもその言葉は二年前に自分の言ったものだった。
何もないではないか。
あの子のいない世界。
何もかも失ってしまった悲しみ。
この人もそうなのだろうかと、翔は思った。
母に裏切られ、その母を殺し、癒されない傷のまま幾千年――。
「死して当然の輩だよ」
彼は無表情のまま、言う。
「初めは、信じていたよ、すべてを。だが、あの人間は…」
「心まで…本当に心まで裏切ってしまったのだと思っているんですか?」
「お前に何が分かる」
「僕は信じていますから」
「裏切られてもか?」
「ええ。…いいえ、たとえ裏切られても僕は、それでも自分の気持ちに正直でありたい。大切なのは、思われるよりも思い続ける気持ちだから。大切な人が幸せでいられたら、僕はそれでいいんです」
自分でも臭い台詞だと思った。が、言葉にすればこれが最も近い思いには違いなかった。
「…話にならないね」
「人を…あなたは本当に人を好きになったことはないんですよ、きっと」
「ならばお前達は何だと言うんだ? 愛した者に裏切られ、お前達も牙を剥き、何が残ったと思う? 絶望だけだ」
それが彼の心の大半だと翔は知る。
しかし、彼が悩んだと同じように苦しんだ子がいた。自分が最も慈しんだ子――綺羅。
「あの子はいつも泣いていましたよ。自分さえ生まれてこなければと」
「忌まわしい人の子だ」
「あなたにとってはね」
「お前…」