第4章
竜の血筋
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 翔が巨大な気の流れを追って現れたそこは、既に町がひとつ消し飛んでいた。

 残骸から、それ程大きくはない町だと思えるが、ここに住んでいた人々はどうなったのか。この場にいたなら無事では済むまい。

 また、木竜は無事なのか。

 遅かったのだろうか。いや、まだわずかに残る気を感じた。弱々しいが、近くに確かにあった。

 そして、もうひとつ、背後にぞっとする程の気が近づいてくるのを感じた。

 ギクリとして振り返ったそこに立つ者――20代半ばくらいの、目立つスーツを着た男。

「天人…か…」

 かつての自分の名を口にする彼は、その昔知っていた者の気をまとっていた。

 父竜――明日香揚である。

「地人はしくじったのか、それとも」

 呟く楊に、紗和のことを信頼していないのではないだろうかと、翔は思った。

「その姿が現世でのあなたですか?」

 翔はそれでも毅然とした態度を見せる。その彼に、相手は何を思ったのか、話題をあらぬ方向へと飛ばす。

「なるほど、よく似ている。杳くんとは従兄弟だって?」

 冗談めいた口調であるが、目つきは険しかった。

 杳のことを知っているのなら、もしかして彼が綺羅の転生者だとも気づいているのだろうか。もしそうだとしたら、かなりまずいことになると思った。

「地人といい、君といい、何を人間ごときにこだわるのか分からないな」
「木竜はどうしたんですか?」

 翔は、触れて欲しくない話題から、何とか軌道修正する。それに、容易く楊は乗ってくる。

「どうもこうもない。見ての通り反抗的だったので滅してやろうとしたんだが、どうも逃げ足が速くて難儀していたところだ」

 軽い口調でそう言う彼に、翔は眉をしかめる。

「徒(あだ)なせば自らの子でも平気で殺せるんですね」
「君に言われる筋合いはないね。そうだろう、天竜王?」
「何のことですか?」

 もしかして、二年前のことをこの人は知っているのではなかろうか。

 睨む翔に、楊は肩をすくめる。


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