第4章
竜の血筋
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足止めしたのは木竜を味方にするよりも、むしろ翔と父竜とを対戦させないためだった。まだ、次期が早いと思っていたのだ。それなのに、自ら飛び込んで行くなど。
「戦、翔くんがここで負けたら本当に勝利はないからね」
紗和は現状を把握しきれずにいる寛也に言う。
「あいつ、どこへ行ったんだ?」
「木竜を助けにだよ」
「助けにって…」
「敵もぼーっとしてるわけじゃないってことだ」
横から口を挟むのは優。
「お前らが仲間を探していたように、奴も俺達を探しているってことだ。かつて敵にまわった奴らをな」
優は苦い表情を浮かべる。
困惑しているだろう寛也と、難しい顔をする優とを交互に見やって、紗和は聞く。
「さて、君達はどうする? 僕と戦う?」
紗和の言葉に、思わず構える寛也。
それを見て、紗和はまた穏やかに笑む。
「翔くんを止めた方がいい。機をうかがえば小兵も王の首を取ることができる」
それは、寛也達の勝利の可能性を言う。そんなことを口走る紗和の真意は何なのか。
「新堂、お前もしかして…」
「僕は僕の役目を果たすだけだけどね」
それだけ言って、紗和は翔と同じように空気に消えた。
「翔くんを追いましょう、寛也さん」
浅葱が声をかけるのに一瞥をくれ、優に命令する。
「杉浦、こいつ、任せるぞ」
「あ、ああ…」
「気をつけて下さい」
優と浅葱の声をきいてから、寛也は翔が向いていた方角に目を向ける。
「間に合うといいんだけどな」
東の方向。自分には瞬間移動なんて芸当は到底できない。加えて、仲間の気配を辿っていくなど、できる筈もなかったのだが、四の五の言っている場合ではない。
力の差と、能力の違いに改めて悔しさを感じる寛也だった。
* * *