第4章
竜の血筋
-1-

10/17



 何が起こるのか理解できなかった寛也の耳に、翔の声が聞こえた。

「みんな、下がって」

 いきなり、足元の大地から吹き上げる気の激流。

 砂を含んだ局地的な竜巻が寛也達を襲う。

 全員が、一瞬で吹き飛ばされる。

 とっさに、転がって行こうとする浅葱が目に止まり、寛也はその身をかばって気の流れに乗る。

 その寛也の目の端に、翔が一人、気の渦の中に立ち、薄いシールドを張るのが見えた。

 寛也はうまく着地すると、側に優の姿を見つけて浅葱を押し付ける。そして、再び気の中へと飛び込もうとした。

 その瞬間、翔の気と、紗和の術が衝突する。

 電気を帯びた熱風。その中に立つ翔と紗和。

 寛也はそれに近づけないことを知る。

「新堂さん、こんな所で力を使ったりしたら…!」
「…」

 つぶやいて繰り出される紗和と翔の術のぶつかり合いに、寛也は押し潰されそうだった。

 寛也はそのまま戦いに参加せずとって返し、優に近づく。

「人類救出作戦、行くぞ」
「えっ?」
「あいつらの力がこの辺りで爆発してもいいように、人間をエリア外に出すんだよ。前に東京でそれをやったの、お前だろ。聞いたぜ、静川に」

 二年前、地竜王である紗和を捕らえようと潤也達を罠にかけた時、都会のど真ん中であるにも関わらず人々がその町から消え失せ、気が付いた時には別の場所にいたという奇妙なことがあった。

 また、天橋立で同じような現象を聖輝が目撃していた。

「…いいだろう」

 まるで戦力にならなくても、役に立つことはある。優はそう思って、寛也の言葉にうなずいた。


   * * *



<< 目次 >>