第4章
竜の血筋
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何が起こるのか理解できなかった寛也の耳に、翔の声が聞こえた。
「みんな、下がって」
いきなり、足元の大地から吹き上げる気の激流。
砂を含んだ局地的な竜巻が寛也達を襲う。
全員が、一瞬で吹き飛ばされる。
とっさに、転がって行こうとする浅葱が目に止まり、寛也はその身をかばって気の流れに乗る。
その寛也の目の端に、翔が一人、気の渦の中に立ち、薄いシールドを張るのが見えた。
寛也はうまく着地すると、側に優の姿を見つけて浅葱を押し付ける。そして、再び気の中へと飛び込もうとした。
その瞬間、翔の気と、紗和の術が衝突する。
電気を帯びた熱風。その中に立つ翔と紗和。
寛也はそれに近づけないことを知る。
「新堂さん、こんな所で力を使ったりしたら…!」
「…」
つぶやいて繰り出される紗和と翔の術のぶつかり合いに、寛也は押し潰されそうだった。
寛也はそのまま戦いに参加せずとって返し、優に近づく。
「人類救出作戦、行くぞ」
「えっ?」
「あいつらの力がこの辺りで爆発してもいいように、人間をエリア外に出すんだよ。前に東京でそれをやったの、お前だろ。聞いたぜ、静川に」
二年前、地竜王である紗和を捕らえようと潤也達を罠にかけた時、都会のど真ん中であるにも関わらず人々がその町から消え失せ、気が付いた時には別の場所にいたという奇妙なことがあった。
また、天橋立で同じような現象を聖輝が目撃していた。
「…いいだろう」
まるで戦力にならなくても、役に立つことはある。優はそう思って、寛也の言葉にうなずいた。
* * *