第4章
竜の血筋
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紗和が今頃わざわざ出向くことに、裏を考えずにはいられない。
「今日は君たちを説得に来た」
「説得?」
紗和の意外な言葉に一同は顔を見合わせる。
「何言ってんだ。お前が寝返ったからって俺たちも同じだと思うなよ」
「寛兄」
翔が喧嘩腰の寛也をいさめる。その翔に、寛也は舌打ちして引く。
「お前も黙って聞いてんじゃねぇよ」
そう言ってそっぽを向いた。
「相変わらず人の話を聞かないんだから、困るな、戦は」
独り言のように、しかし寛也の耳にしっかり届くように紗和はそう言ってまた笑った。
紗和とは対象的に、翔は固くした表情を崩さないままだった。
「僕は誰が新堂さんと同じ考えを持とうと、止める気はありません。現実、父竜は強いですから、太刀打ちできるとは思いませんし」
「だったら何も死を選ぶことはないよ」
「そうですね。だから誰をも止めません」
寛也が睨んでくるのを無視して翔は続ける。
「でも僕は…一人になってもきっと従うことはないと思います」
「被害が大きくなるだけだよ。君がどちらにつくかによって他の者も死ななくてすむだろう。そんなことは考えないのかい?」
「僕はそれ程器用ではありませんから、意を曲げて敵につくことなんてできません」
翔の答えに、紗和は初めて笑みを崩す。
「長としての自覚はないようだね」
そんなものは元からないと、翔はつぶやく。
「いつも君の見ていたものは仲間達じゃなかったね、そう言えば」
「半分は人の血ですから」
「仕方ないね」
また小さく笑って、紗和は今度は寛也に目を向ける。思わず構えを取る寛也。
「君には、聞くまでもないか」
「当たり前だっ!」
そして、優に向く。
「光竜。君はどうやら迷っているみたいだけど、どうする?」