第4章
竜の血筋
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「じゃあ、取り敢えず竜の宮へ戻りましょうか」

 状況を簡単に説明した後、翔がそうきりだした。

「何だ、一人ずつ置いて行くのか? 能率が悪いな」
「相手が相手ですからね。慎重に動いているだけです」

 らしくないと言う優に、浅葱が申し訳なさそうに答える。

「僕を連れているからね。今回だけの飛び入りだもの」

 その言葉に合点がいった様子で、優は肩をすくめて見せた。

 と、その時。

「ん?」

 翔が最初に気づいた。

「どうした?」

 寛也が不審そうに振り返る。

「気を付けて下さい。地竜王が…来る」
「!?」

 その場の全員に緊張が走った。

 すぐにその気配は大きくなった。

 地竜王――本来、仲間であるべきの者の気配。

 ざわっと、空気が溶けた。その隙間から姿を現したのは、紗和だった。

「彼が…地竜王?」

 唯一、面識のない浅葱が尋ねるのを、翔がうなずくだけで返した。

「久しぶりだね、翔くん」

 口元に柔らかい笑みを浮かべて、紗和が先に口を開いた。

 それは、まるで仲間に与えるもののように、穏やかなものだった。その紗和に、寛也が怒鳴る。

「新堂…お前、何考えてんだよっ!」
「状況が変わるとね、気持ちも変わるんだよ。悪いね、戦」

 その紗和の言葉に一歩足を踏み出して、更に怒鳴り出しそうな寛也を、翔が制する。

 そして、視線は紗和に向けたまま。

「父竜の使いですか?」

 紗和は翔の言葉に小さく笑う。

「僕ひとりなんだから、そんなに緊張することはないよ。それとも僕が怖い?」
「そうは思いませんが」


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