第4章
竜の血筋
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 宮崎県――。

 県都からさほど離れていないベッドタウンに降り立ったのは、翔と寛也、そして案内役の雪乃と浅葱の4人だった。

 普段からさして賑やかな方ではないが、この地に近づくにつれて口数の少なくなってきた浅葱に、翔は声をかけた。

「久しぶりなんだろ? ずっと旅してたって言ってたよね」
「うん…」

 その風景に何を思うのか、浅葱はようやくに笑みを浮かべて振り向く。

「悪いんだけど、一人で行かせてくれる?」
「大丈夫?」

 浅葱の顔を覗き込む翔。

「うん、多分…」

 穏やかに笑って、浅葱は答えた。

 あれから三年と、少し。中学を卒業すると同時に家を出て、もう随分の時間が流れたような気がする。

 風の噂で、かつて祖父と一緒に住んでいた高千穂の旧家はもうないと聞く。

 その事実を聞かされた時でも、自分の選択に後悔はなかったと言うのに、ここへきて気分が揺らいだ。

 その浅葱の背を、ポンと軽く叩く者。

「しけたツラしてんじゃねよ。俺ら全員アイツとはちょっと不仲なんだ。お前が頼りなんだぜ」

 寛也が粗い口調ながらも、不器用な気の使い様を見せる。

「うん」

 浅葱は、何だか少し、支えていたものが取れたような気がした。


   * * *


 杉浦優は今、大学生をしている。

 多分家を出るだろうと踏んでいた浅葱には意外だったが、ここにいてくれて見つけやすかったことには感謝した。

 大学生の朝、ましてや今日は日曜日である。家にいるだろうか、出掛けるだろうかと思案しながらしばらく玄関の前で待っていると、飛び出して行く影が見えた。

 優だった。

「優ちゃんっ」

 迷わず声をかけた。懐かしい顔が振り返る。

 その顔は浅葱を認めて、すぐに驚きの表情へと変化していく。

「お前…浅葱…?」

 少し背が伸びただろうか。それとも痩せたからそう見えるだけだろうか。受験勉強のためだろうか。

 頭の冷静な部分で、そんなことを考える。

「元気そうだね。今じゃ、立派な大学生?」
「んないいもんじゃないよ。それより、お前こそどうしてたんだよ? みんな、ずっと心配してたのに」

 その言葉の全部が嘘だと知っていても、そう言ってくれる優の気持ちが嬉しかった。

「少し話がしたいんだけど、時間、大丈夫?」

 大丈夫なわけがない。慌てて玄関から飛び出して行った所なのだから。

 しかし、優はそんなことを一瞬のうちに忘れたかのように即答。

「中、入れよ」

 玄関を指す。

「ううん、今は帰れないんだ。だから、場所を変えたい。ちょっと、付き合って」
「お前…」

 優は浅葱の表情の中に、あの、最後に会った時に見た真剣な色を見いだす。

 そして、黙ってうなずいた。


   * * *



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