第4章
竜の血筋
-1-

3/17


「不穏な空気を感じるんだけど」

 翔達が出掛けるのを見送ってから、ぽつりと仲間達にそう語ったのは碧海だった。

 竜達の居残り組がそれぞれの持ち場につき、暇なら食事の準備でもして欲しいと潤也に言われ、碧海達はお勝手場に立っていた。

 オール電化のシステムキッチンは潤也の趣味だろうか。他の部屋や外観と比べて、ここだけが近代化されていた。

 ジャガイモの皮を剥き終わり、碧海はふと、そう言った。

 その碧海に、美奈が不審そうな表情を向ける。

「不穏?」
「んー、はっきり分かんないんだけど…何となく…変な感じがするんだ」

 碧海の言葉に、小さく笑って百合子が答えた。

「杳さんでしょ?」
「杳さん?」

 美奈は今度は百合子を振り向く。

「怪我したって聞いて、後先考えずに飛び出して行った竜王と、後を守らなければならなかった人との違い」
「何のこと?」
「やーね、気づいてないの? 風竜の彼は杳さんのこと、好きなのよ」

 一瞬の間を置いて、美奈と碧海の二人が叫ぶ。

「うそーっ!!」
「お約束どおりの反応、ありがとう」

 百合子の冷静な言葉に、先に我を取り戻したのは美奈。かなり慌てた様子で返す。

「ちょっと待ってよ。それって、すっごくマズイんじゃないの? だって杳さんは男の子なのに」
「いや、問題はそういう所じゃなくてね」

 説明しようとする百合子の横から碧海が一言。

「杳さんハーレム…」
「じゃなくってねっ!」

 百合子は碧海の唇を引っ張ってやった。


   * * *



<< 目次 >>