第4章
竜の血筋
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「不穏な空気を感じるんだけど」
翔達が出掛けるのを見送ってから、ぽつりと仲間達にそう語ったのは碧海だった。
竜達の居残り組がそれぞれの持ち場につき、暇なら食事の準備でもして欲しいと潤也に言われ、碧海達はお勝手場に立っていた。
オール電化のシステムキッチンは潤也の趣味だろうか。他の部屋や外観と比べて、ここだけが近代化されていた。
ジャガイモの皮を剥き終わり、碧海はふと、そう言った。
その碧海に、美奈が不審そうな表情を向ける。
「不穏?」
「んー、はっきり分かんないんだけど…何となく…変な感じがするんだ」
碧海の言葉に、小さく笑って百合子が答えた。
「杳さんでしょ?」
「杳さん?」
美奈は今度は百合子を振り向く。
「怪我したって聞いて、後先考えずに飛び出して行った竜王と、後を守らなければならなかった人との違い」
「何のこと?」
「やーね、気づいてないの? 風竜の彼は杳さんのこと、好きなのよ」
一瞬の間を置いて、美奈と碧海の二人が叫ぶ。
「うそーっ!!」
「お約束どおりの反応、ありがとう」
百合子の冷静な言葉に、先に我を取り戻したのは美奈。かなり慌てた様子で返す。
「ちょっと待ってよ。それって、すっごくマズイんじゃないの? だって杳さんは男の子なのに」
「いや、問題はそういう所じゃなくてね」
説明しようとする百合子の横から碧海が一言。
「杳さんハーレム…」
「じゃなくってねっ!」
百合子は碧海の唇を引っ張ってやった。
* * *