第4章
竜の血筋
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 その彼に、翔が声をかける。

「静川さんはどう思います?」

 あまり多くを語らないこの人物に、翔は一目置いていた。何にせよ、現世での最年長であるから、そこにいるだけで雰囲気が大きく違う。

「個人的には遠慮したい戦いだな。他の奴がどう思うかまでは知らんが、前回、他人を決め込んだ歌竜、木竜の二人はどうかと思う。残る二人は半々って所か」
「そうですね」

 前者の二人は、その相手が竜王であっても、父竜であっても、非協力的であろう態度は同じだと予想された。

 他の光竜、闇竜の二人はかつて竜王についたのだか。

「どちらにしても急ぐほうがいいと思うけど。手分けしたらどう?」
「それもいい考えですが…」
「一人で動くのは危険だ。かと言ってここを手薄にするわけにもいかないからな」

 仲間の討論に、翔はしばし考えて、答える。

「仕方がないですね。一人ずついきますか」

 まず、協力の可能性のある方から当たるのが常套。

「闇竜と光竜、どっちが先だ?」
「闇竜は仙台、和泉辰己。まだ大学生をしていると思うわ。光竜は宮崎、杉浦優。北と南ね」

 雪乃がさらりと言ってのける。かつて彼ら全員を覚醒して回った折、その存在を捜し出すのに骨を折ったことだろう。

「え…杉浦優って…」

 浅葱が再び口を挟む。自分と同じ名字を持つその名に聞き覚えがあった。

「親戚?」

 即、聞いてきたのは翔だった。

「…えっと…単なる同姓同名かもしれないけど、従兄にひとり」
「マジかよ。できすぎた話だな」

 言ったのは寛也。そう言う自分も、風竜の潤也とは双子の兄弟である。

「そうでもないでしょう。静川さんの所の例もあるし…」

 自分と杳の関係もあるしと、翔は言葉を飲み込む。

「決まりだね。まず光竜、杉浦優くん。誰が行く?」

 翔の言葉の終わらないうちに、潤也が早々にも結論づけ、問い返す。

「そうですね。僕と杉浦くん、従兄弟っていうなら話が早いのでお願いできる?」

 浅葱は多少自身無さそうに、うなずく。それを見てから、寛也に向く翔。寛也は腕組みをしてうなっている。

「今回、気乗りがしないみたいですね、ヒロ兄は」
「別にそうじゃないけど、行ってもいいぜ。ボディガードでいいんだろ? 説得役はお前らに任せるよ」
「分かりました。ということで、残りは留守番です。雪乃さんは一緒に案内をお願いしますね」
「案内役はそこにいるじゃない。それより別に闇竜の方、行ってあげるわ」

 確かに浅葱がいるのだから、別人の同姓同名でない限り、光竜の居所は簡単に分かる。無駄な時間を費やさずとも、手分けをすればいいのだ。が、先程そう言った潤也が口を挟む。

「単独行動は、危険だよ」

 潤也の言葉に雪乃はヒラヒラと手を振ってから、聖輝を振り向く。

「分かってるって。水竜、一緒に来なさい」
「誰がっ」

 一言だった。

「あら、いい心構えね」
「どっちが」

 危うく言い合いになるところを割って入るのは翔。

「まあまあ、僕が後で一緒に行きますから、雪乃さん、闇竜は後でということにして下さい」
「あなた一人で全部やってたらバテるわよ。他の連中をもう少しうまく使えばいいのよ」

 ジロリと翔を見やって、雪乃は冷たく言う。口は悪いが正論を語る彼女に、笑みをこぼしながら翔は返した。

「大丈夫ですよ。これでも結構タフですから」
「あっそうっ」

 雪乃はそのままそっぽを向く。翔は苦笑を浮かべながら、一同を見回した。

「じゃあ、行きますか」


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