第4章
竜の血筋
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「で、他の人達のことなんですけど」
結界を張っているのは、寛也達兄弟の住むアパートの居間だった。そこを扉にして空間を歪める事によって陣を張っていた。
かつての竜の宮を模して、やや使い勝手のよい風にアレンジを加えたそこは、既に合宿場と化していた。
全員が集まれる広間は、和室の続き間を幾つもぶち抜いたように広かった。そこへ全員集めて、翔は澄ました顔で話を始めた。
が、何故か雰囲気が違っていた。
今まではてんでバラバラにくつろいでいる連中が、じっと黙って自分の方を向いていたのだった。
「何? どうかしたの?」
翔は目をしばたかせながらみんなを見回し、近くにいた寛也に視線を投げる。
「いや、面白いものが見れたからな」
寛也のそんな言葉に首を傾げて見せる翔に、今度は反対側から答える声がした。仲間に加わったばかりの露だった。
「血相変えてすっ飛んでいく竜王って、めったになかったよなぁ」
腕組みをして首を縦に振りながら噛み締めるように言うその様に、他からもくすくすと笑い声がした。
みんなの言うのは昨日のこと。杳が怪我をしたとの浅葱の連絡に、話も半分のまま飛び出して行ったことを言っているのだった。
誰も制止をする間もなかった。気が付けば電話の向こうにいたのだった。
「あ、あれはね…」
「まあいいじゃない。それより、残る4人、どうするか決めるんじゃなかったの?」
落ち着いた声で助け舟を出したのは潤也。最初に要らないことを口走った兄の寛也をじろりと睨むが、すぐに視線を逸らす。
「お、おお、そうだな」
どうやら弟の機嫌が宜しくないことを悟って、寛也は相槌を打つ。
ようやく、本題に入れて、翔がほっと息をついた。
「話を持っていくのはいいけど、私はどっちかっていうとあまり関わりたくないわよね」
雪乃が、まず口を開いた。最初から、仲間捜しの手伝いはするものの、協力はしないと公言していた彼女である。
「どういうこと?」
「勝てっこないし、第一、戦力にならないでしょ?」
残る竜達のことを言っているのである。
自分も含めて、寛也達戦闘タイプの者とは違い、残る竜達は例え集めて仲間にしたとしても戦力的には同じことではないのかと言うのだった。
「そんなことありませんよ」
雪乃の言葉に口を挟んだのは浅葱だった。
「ひとりひとりの力は小さくても、集結すれば大きな戦力になります。僕達だって、微力ながら協力します」
「ホント、微力よね」
「何よ、その言い方っ!」
つぶやく雪乃に、血気盛んな美奈が中腰になる。離れて座っていた聖輝が、妹の名を呼び、制止をかけるのに、美奈は不満顔で座り直した。