第3章
償い
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「杳兄さん、これ、一体、どーいうことだよっ!」
知らせを受けて、杳が救急車で運ばれたと言う病院まで来て、相手の無事な顔を見ると同時に翔は怒鳴っていた。
本気で切れそうだった。
その翔に、杳は青白い顔を向けて眉を寄せる。
「あまり大きな声、出さないでくれる? 貧血でめまいしてるんだから」
「とにかく、これ以上心配をかけないでよ。心臓が幾つあっても足りないよ」
「分かったから、今度から気をつけるから」
だから怒鳴るなと、杳はシーツを頭から被った。
「まったく…」
取り敢えず傷口は塞がりかけているので手術も必要なく、一週間もすれば退院できるとのことだった。
翔は、父竜には差して効果はないかもしれないと思いつつも、病室の周りに結界を張った。
それから、明日も来るからと言い残して病室を出た。
入れ違いに着替えを持ってやって来た叔母が、同じように病室で怒鳴っているのが聞こえた。
聞こえてくる杳のうなる声に、苦笑せずにはいられなかった。
これで少しは大人しくなって欲しいものだった。
病室を出て、階段を降りると、待合室があった。そこで見覚えのある少女が待っていた。
茅晶だった。
「天竜王、天人」
「小鬼か…どうして術が解けた?」
確か、記憶を消した筈だったが。
「お生憎さま。私、日記つけてたの。あっと言う間に思い出したわよ」
自慢げに言う言葉に、翔は眉をしかめる。
杳も早くに思い出したし、自分の術の威力も昔とは比べ物にならないくらいに落ちているのだろうか。
苦い表情の翔に、茅晶はいきなり話題を変える。
「そんなことより、貴方、あみやの肉体が現存することは、知ってたんでしょ?」
その茅晶をじろりと睨んで、翔は答える。
「いや…。だけど、有り得ないことではないとは思ってたけど。僕の剣の一方が封じられているのはずっと感じていたからね」
「あみやを殺した剣ね」
茅晶の語調の変化に、翔は興味なさそうに視線を外す。