第3章
償い
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「杳さん、どうしたんですか?」
「大丈夫なんですか?」
次の電話をかけようとする潤也に質問を浴びせるのは、碧海と美奈だった。潤也はそんな二人に安心させるように笑顔を向ける。
「大丈夫だよ。ちょっとしたかすり傷だったみたいで、大袈裟に救急車を呼んでしまったって」
「なーんだ。驚いたー」
ほっと胸を撫で下ろす美奈。その横で百合子が何か言いたそうにしていたが、敢えて口を噤んでいる様子だった。
「さあさあ。早く食事を済ませてくれるかな。今日は午後から色々買い出しに行ってもらわなくっちゃならないからね。みんな、キビキビ働いてもらうよ」
パンパンと手を叩いて、みんなを追い払う。食事を中断していた者は、はーいと素直に返事をして、自分の席に戻って行った。
最後に残った寛也に、潤也はみんなに聞こえないように聞いてきた。
「様子、見に行ってくる? こっちは大丈夫だから」
言われて寛也は、行くに行けない気がした。
心配ではあったが、潤也の言った内容が事実なのだとしたら、寛也が行かなくとも大丈夫なような気がした。
それに、翔もすっ飛んで行ったことではあるし。
ただ、ザワザワと、胸の内は騒がしかったが。
「いや、いい。杳は俺が行くより、お前に来て欲しいんじゃねぇか?」
「は?」
寛也の言う意味が分からないと、潤也が見返してくる。それを避けるように寛也は背を向けた。
「杳、今日は帰って来ねぇんだよな。だったらあいつの分も食っていいか? もったいねぇし」
言いながら、寛也は自分の席に戻っていく。
潤也が呆れたような目で見ているだろうことを、背に感じながら。
* * *
潤也に言われた通り、共同生活をするに当たって必要な物資を買いに、美奈達は出掛けて行った。だらだらと寝転がろうとする碧海を引っ立て、聖輝をボディガードにして。
そんな彼女達がいなくなった後、静かになった部屋で、自宅から持ち込んだテレビを何とか見られるようにできないものかと寛也は悪戦苦闘していた。
携帯電話の電波が届いているのだから、テレビの電波も届く筈だと言い張って。
その寛也に、露が手を貸すでもなく聞いてきた。
「お前ら、付き合ってんじゃねぇの?」
どうやって電源を確保したのか、そこから考えてみれば良いのにと思いながらも、他に気晴らしになるようなものもないので、寛也の行動を面白そうに見やりながら。