第3章
償い
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それから、また歩いた。道なき道を、シダを踏み越えて。
それはまるっきりあてずっぽうのように浅葱には思えた。
「杳さん、彼女、誰なんです?」
話してくれないものだから聞いてよいものかどうか迷ったが、気になったので浅葱はようよう聞いてみた。
渋ると思っていた杳は、意に反して簡単に答えてくれた。
「あみやの側にいた鬼の子、覚えてる?」
「ああ、一角の…」
「そう」
魔の物を巫女が側に置くなどと、ひどく言われたものだと聞いたことがある。
後にはそれが不祥事の始まりだったと囁かれたのを、浅葱はおぼろげに思い出す。
「なら、教えてあげればいいのに。杳さんがあみやだって。彼女、信用できないんですか?」
「多分、気づいてる」
「だったらそんなに邪険にしなくても…。ちゃんと説得すれば聞いてくれますよ」
杳は浅葱の問いが聞こえないふりをする。
「杳さん。そうやっていつも心閉ざしてばかりなんて、つらくないですか? 頼りなくても仲間でしょ? もう少し周囲を見て下さい」
「浅葱に説教される覚えはないけど」
「そんな言い方ないと思います」
浅葱は前を歩く杳の腕を捕まえる。
「杳さんは何でも黙って一人でやろうとする。でもね、それじゃあ勝てないんですよ」
「うるさいな、だからついて来るなって言ったんだ」
「杳さんっ」
杳は浅葱の腕を振り払う。
「いくら束になったって、勝てるわけないんだ」
「えっ…?」
杳の弱気な発言に、浅葱は意外そうに彼を見やる。
「昔勝てなかったものを更に弱くなった竜達の力でなんて、不可能なんだ。みんな分かってるんだよ。奇跡なんて起きっこない。だからせめて封じるしかないんだ。昔と同じようにもう一度封じて…それしか方法はないんだよ」
「そんな力、僕達には…」
「『あみや』なら、使えるかもしれないだろ?」
一瞬、何を言っているのか浅葱には理解できなかった。
「それって、一体どういうことですか? まさか、杳さん、あみやの身体に…」
「招魂術をかけてもらう」
ぞっとしない話を平気な顔で語る杳。浅葱は杳の心中が分からなくなった。
「…じゃあ、杳さんはどうなるんですか? あみやとして蘇っても…」
「あみやを生き返らせるの?」
二人の会話を聞いていたものか、突然に少女の声が聞こえた。