第3章
償い
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水穂露は雪乃の家からさほど離れていない――竜体に転身して移動する場合の話だが――都内の住宅区にあった。
翔と同級の高校三年生の彼は、土曜日の部活動が終わったところだろうか、学校からの帰宅途中だった。
それを、人目のつかないところで呼び止めた。
「な、何事だぁ?」
突然現れた翔達に、露は大袈裟に驚いてみせた。
「へぇ。学ランが似合うじゃねぇか。さすがコーコーセイ」
とは寛也。
「竜王…」
寛也を敢えて無視して、露は翔に目を向ける。自分もいるのにと、雪乃が横でふて腐れる。
「少し付き合ってもらえるかな。重要な話なんだけど」
「重要ね…」
妙な組み合わせだと思いながら、露は翔の言葉に従った。
* * *
適当な、人気のない広場まで来て、翔が現在の状況を説明した。
露は話に時折茶々を入れながら、それでも最後まで聞いていた。
「また、やっかいな事に」
半分呆れながら言う露は、しかし面白そうに目を輝かせていた。
「現況は全くの不利。勝算も殆どないんだけど」
翔は淡々とした口調のままで厳しい現状を告げる。
「君にはどちらにつくか、つかないかを選ぶ権利がある。勿論、そのことで君を責めることはないよ。だけど、できるなら、協力して欲しい」
「ホント、まるっきり別人だな、お前」
「え?」
話をいきなり逸らされて、翔は聞き返す。
「いや、元に戻ったって言った方がいいのかな。昔のさ、天竜王に」
言われて、翔はわずかに目を伏せる。