第3章
償い
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「杳さんっ」

 翌日の朝早くのことだった。

 杳が忍び足で廊下を歩いていたら、背後からドタドタと足音も高らかに駆け寄ってくる集団があった。

 浅葱達、例の4人だった。

 朝から潤也に特訓してもらうのだと、朝食の時に言っていた筈なのだが、どうしてここにいるのか。

「杳さん、ここを出るって本当ですか?」

 杳に追いつくと、代表してそう聞いてきたのは浅葱だった。

「耳が早いな。誰にも内緒にしてたんだけど」
「朝寝坊な杳さんが、朝早くから布団を畳んでいるのを見たら、普通、何かあるって思うよな」

 ボソリと呟くのは碧海。その口をつまみ上げる杳。

「どういう意味?」

 慌てて浅葱が止めに入った。

 女の子達二人はおもしろそうに見やっているだけだった。

「それで、外へ出て、何か目的があるんでしょ? 僕らも一緒に行きますよ」
「はぁ?」
「ボディガードです」
「そう言うことは、自分で自分の身を守れるようになってから言って欲しいよな」

 杳はそう言って浅葱の額をつつく。

 浅葱は言い返せずに、言葉を詰まらせた。その通りなのではあるが。

「でも危険だわ。今、ひとりで出歩くなんて。一体どこへ行こうって言うの?」

 次は百合子が問い詰める。

 その言葉に杳は鬱陶しそうに返す。

「別に。ちょっとね」
「歯切れ悪いなぁ。こういう時は人間、ろくな事を考えてないんだぜ」

 そう言ったのは懲りない碧海だった。その場で、杳に口の端を両側から引っ張られる。

 それを横目に、もう碧海を助ける気にもならなくなったらしい浅葱が言う。

「どちらにしても勝手な行動は謹むべきです」
「みんなには関係ないことだよ」
「関係なくはありませんよ。杳さんは僕達の仲間だから。どうしても行くと言うのなら、勝手について行きます」

 強い口調で言う浅葱をにらむ杳。

「邪魔だって言ってんの、分からない? 付いてくるな」
「じゃあ、ここで大声出してもいいですか? 杳さんが逃亡しようとしてるって」
「…浅葱、性格悪い」
「そうですか?」

 さらりと返す浅葱は、杳の表情に勝利したことを知る。

 結局、杳は不承不承、折れるしかなかった。


   * * *



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