第3章
償い
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「みんななかなか筋がいいね」
潤也の教育の賜物というよりも、もともとその素質はある者達ばかりだった。
以前に美奈が杳の教えた呪文を簡単に言ってのけたことも実際ではあった。ただ、彼女の場合、覚えた端から忘れていくのが大きな欠点でもあったが。
「そう? 何とかモノになりそう?」
「それはどうかな」
翔と杳の二人は、のんびりと教育現場を眺めやっていた。
自分は関係ないと言い張る杳に浅葱達は何も言えず、結局自分達だけで潤也の手ほどきを受けていたのだった。
「彼らは大して力を持っている訳ではない。却ってその方が楽だろうね」
翔は敵にかなわないのなら、無駄な抵抗はしない方がいいと言うのだった。
「…翔くん、負ける気でいるんだ?」
「勝てるなんて信じてるの、きっとヒロ兄くらいなものだよ。僕は父竜が怖い」
「翔…」
「それでも僕は戦わなければいけないのかなぁ。新堂さんも敵に回って…」
らしくない自信なさそうな横顔に、さすがの杳もいつもの口調で言えなかった。
その気配が聡い翔には伝わるのか、すぐに翔は立ち上がる。
「ごめん、杳兄さんに言っても困るだけだよね。ごめん…」
そのまま座を外そうとする翔を、慌てて引き留める杳。
「オレも信じてるから。絶対に勝てるって」
「やだな、信じたからって力の差が…」
「それでも、信じてるよ」
翔は、一瞬戸惑った表情を浮かべるが、照れ臭そうに笑みを返した。
* * *
「それでも、信じてるよ」
自分以外の者に言われた言葉に、寛也の胸の内に浮かぶのは嫉妬心だった。みっともないと潤也に言ったのは、つい先程のことなのに。
杳が自分だけではなく、他の者にも心を許すことをずっと望んでいた筈なのに、実際にそんな言葉を聞いてしまうと、ジワジワと心の中を嫌なものがはい回る気がした。
それでも、そんなことは杳には知られたくなかった。相手のことを思う余り、束縛なんてしたくなかったから。
苛々する気持ちを押さえたくて、寛也は身体でも動かそうと白州の庭に飛び降りた。
途端、声をかけられた。
「ヒロ、庭園を壊す気?」