第3章
償い
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「この物理現象が不思議だよなぁ」
言ったその場で出来上がった神殿に、舌を巻くのは碧海だった。
結界内の一角に場所を取ってつくられたそれは、切りたての桧の匂いがした。
「僕達のいた世界とは、ここは次元が異なるからね。深く考えない方がいいと思うよ」
そう翔が言うのを聞きながら、碧海はまだ首を傾げたまま神殿を見やっていた。
神殿の中は祭壇だけという質素なものだった。そこに入って、翔は全員を見回す。
「それで、呪文だって?」
「取り敢えず、結界くらい張れたらいいと思って」
代表して答えたのは浅葱。
「それは外界でしてくれる? 結界内で別の結界なんて張ったらどうなることやら」
「どーなるんだ?」
能天気に聞くのは碧海。
「やってみる? 昔、それをやろうとした炎竜が危うく分解されそうになったけど」
翔はぞっとしない話を穏やかに笑いながら言う。碧海は一歩引く。
「簡単な攻撃呪文でも覚えたらいいよ。巫女や神官としてはふさわしくないかもしれないけど、しのごの言ってられないからね」
良く分かっている様子でそう翔は言った。
「杳兄さんも覚える?」
振り返り、他人顔をしていた杳に翔は聞く。が、杳は即答。
「んなもの、オレが使えると思う?」
翔は杳の言葉に肩をすぼめる。
「それもそうだね…」
「でも、杳さん、あの時、私に呪文…」
言いかけて、美奈は杳に睨まれ、慌てて言い直す。
「し、失言でした…」
ほんのちょっとしたやり取りに、翔は小さく首を傾げただけで終わらせた。
そして、彼らの先生を潤也に指名した。
* * *