第2章
再会と決別
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「ヒロ兄、知りませんでしたか? 結界の中で破廉恥な真似をしたら、その結界を張っている者に全部筒抜けになるんですよ」
「げっ」
翔がすぐ背後に立っていた。腕組みをして、寛也を汚いものでも見るような目付きで睨みながら。
「いいんですか? そんなことを知られても。勿論、僕も結界内は常にサーチしていますから、ヒロ兄が愚挙を引き起こすようなことがあれば、即、邪魔しますけどね。みんなの前にさらし者にして」
本気でやりかねない顔付きの翔に、寛也は諦めたように返した。
「わーったよ。ったく、冗談も通じねぇんだから」
冗談などではなかったのだが。
寛也にも分かっている。そんなことをしている場合ではないことも、杳自身が嫌がるだろうことも。
ほんの少しだけ我がままを言ってみたかっただけだった。
そう思って顔を上げると、まだ小言を言う潤也と、睨むばかりの翔の向こうで、杳がかすかに笑んでいるように見えた。
* * *
ひと悶着してから場所を変えた先は、潤也が作戦会議の部屋として作った、畳30畳はあろう大部屋だった。
宴会でもする気かと呟く寛也は軽く無視された。
座卓を囲んで座布団を敷く辺り、アパートと同じだなと内心笑いながら寛也も席についた。
広い部屋に、寛也と潤也、それから翔の三人だけでは何とも閑散とした感じだった。杳が自室を見てくると言って座を外したので尚更だった。
「新堂さんがそういいましたか」
寛也の話を聞いて、翔は落ち着き払った表面を見せていたが、その実小さくため息をついてそう言った。
「直接攻撃が始まるかも知れません。みんなを集めましょう」
「そうこなくっちゃな」
翔の指示に寛也は同意する。これでまだ様子見を提言されたら本気で反発してやろうと思ったのだが。
が、横から口を挟む潤也の口から出た名に、寛也はピタリと動きを止める。
「紫竜なら全員の居場所を把握しているんじゃないかな」
紫竜――滝沢雪乃(たきざわゆきの)。寛也達より一つ年上の、竜一族紅一点であるが、どうしたものか寛也とは馬が合わなかった。
2年前、自分達竜族全員を覚醒させて回った彼女なら、全員の居所を知っていると言うのだった。
寛也は、あの居丈高な態度がまったくもって気に入らなかったのだった。相手の方も同じように嫌悪しているのは分かっていた。
「あいつか…?」
「彼女を怒らせないようにね、ヒロ」
「俺が行くのかよ?」
当たり前だと言わんばかりの表情を返す潤也。横で聞いていた翔は何故か笑いを堪えていた。
「文句言わないで、行っておいで」