第2章
再会と決別
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目を覚ますと自分の部屋だった。
「おい、大丈夫か?」
側にいた寛也が顔を覗き込んできた。杳はしばらく寛也の顔を眺めてから、ポツリと聞く。
「オレ、何してたっけ?」
「覚えてないのか? 昼間にふらふら帰ってきたかと思ったら、玄関先でぶっ倒れたんだぞ」
言われて、一気に思い出す。
「そうだ、紗和っ!」
起き上がろうとして目が舞った。頭がくらくらして、おまけに吐き気までした。
「あの野郎…」
「新堂がさっき電話してきて、引っ越しできなくなったって言ってたけど、何かあったのか?」
「分かんないよ、オレにも。だけどあいつ、勝算がないから父竜につくって」
吐き気を何とか堪えながら、杳は自分の見たことを説明する。
「何だ、それは」
「そう翔くんに伝えてって」
「…それでお前を返して来たのか? 格好の人質になる筈のお前を?」
「紗和は、オレに翔くんの元へ帰れって」
「ばっかやろーっ!」
寛也は杳の横たわるベッドの縁を拳で叩く。杳はその寛也を目を丸くして見やる。
「杳、翔の所へ帰るぞ」
「えっ? だって紗和は?」
「あいつは父竜の元から離れる気はないだろうよ。説得なんかにも応じないぜ」
「そんなこと…」
反論しかけて、杳は寛也の表情に言葉を失う。
「勝てるわけないんだ。俺達だけで、父竜には。賢いやり方だよ、あいつは。おまけに父竜はそれを認めてやがる。俺達にも寝返れって言ってんだよ」
これ以上敵につく者が出るのをくい止めなければならない。そう言う寛也に杳はうなずくしかなかった。