第2章
再会と決別
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部室は散々な有り様だった。
ドアを開けて、一番に飛び込んできたのは、床にひざまずく紗和の姿。
「紗和っ!」
振り向いた紗和が驚きの色を見せる。
「どうやって…」
紗和の施した結界は、人が誤って近づかないようにするためのものだったのに、どうやってくぐり抜けてきたものか。
そう言えば、2年前にも潤也の作った強固な結界を抜けて来たことを思い出し、紗和は自分の失態に気づく。
――杳は巫女だ。間違いなく、竜王の宮の。
「何やってんだよ、こんな所に一人で来て。こいつはオレに言い寄って来るようなヘンタイなんだぞ」
力を使い果たしてへたりこんでいる紗和に、杳はそう怒鳴る。この場でどういう認識かと、突っ込んでみたくなった。
「やれやれ、みんな僕を誤解しているようだね」
揚が困った様にそう呟く。
「さ、帰ろう」
杳は紗和の腕を取り、立ち上がらせようとする。が、紗和はその手を振り払う。
「紗和?」
「自覚が足りないのは僕の方だったみたいだ」
粗い息をつきながらそう言う紗和に、再び揚は誘いをかける。
「今からでも遅くはない。僕の側につかないか?」
「あんた、もしかして…!」
驚きの表情を向ける杳を、揚は鼻で笑ってみせた。その揚を見て、みるみる顔色が変わっていく杳。
「杳、翔くんに伝えて欲しいんだけど…僕は父竜につくよ」
「紗和…?」
「勝てっこないよ。だから、僕は彼の元へ行く。そう伝えて」
ゆっくりと自力で立ち上がる紗和。
「代わりに一つだけ条件があります」
真っすぐに揚を見据えて紗和は言う。
「杳には手を出さないでください」
杳が抗議の声を上げるが、紗和は無視した。
「簡単なことですよね。あなたにとって、人一人見逃すくらい」
「僕の傀儡(かいらい)にしてもいいと言うなら、生かしておいてあげてもいいが」
「手を出さないでって言ってるでしょう!」
もう抵抗する力もない筈なのに、紗和は攻撃敵な目を向ける。