第2章
再会と決別
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「さっおーっ」
朝っぱらから元気な声に呼び止められた。振り向くと杳だった。
「おっはよう。学科見学するんだろ? 一緒に行かない?」
昨日の微妙な不機嫌さはどこへ消えたものか、今日はすこぶる陽気だった。
「ごめん。僕、ちょっと用事が…」
最後まで言い終わらないうちに、杳は「だったらいいよ」と、そっけなく答えて走って行ってしまった。言い訳をする間もなかった。
紗和は杳を見送りながら呟く。
「ごめん、杳。僕は…」
後ろ髪が引かれる思いだったが、紗和はくるりと背を向ける。
目指すはクラブハウスの考古学研究部。
朝からそこにいるとは限らないが、ここに来れば会えるのは分かっていた。
「新堂くん? どうしたの、早いのね」
どうして見つかるものなのか、部室の前で美都に出会った。
「ちょっと…」
紗和の様子の変化に美都が、ふと気づく。
「…それがあなたの出した結論なの?」
「えっ?」
紗和は美都を見やる。
「彼は裏切りは許さないから、一度仲間に加わると後がないわよ」
「何のことですか?」
「忠告よ。考古研は兼部を許してくれないってこと」
「じゃあ、映研を退部しないといけないってことですね」
「おいおい、僕はそこまで言ってないだろう」
と、またもや背後から声がする。どこから沸いて出て来たものか、揚がそこに立っていた。
ギョッとしているのは美都。
「篠原、君はどうやら僕のことを大きく誤解しているようだね。僕はそんなに冷血な男かい?」
口調はおどけたものだったが、二人の間には何やら不穏な空気が漂って見えた。
* * *