第2章
再会と決別
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 紗和は驚く。

 かつて父竜を封じた時、戦いの指揮を採る天竜王とともに竜神達を率いていたのはこの自分である。その自分にそのようなことを持ちかけてくるとは思わなかったのだ。

 それほどに部下に困っているのか、それとも何か別に思惑があるのか。

「答える前にひとつ教えてもらえますか? 貴方は勾玉を手にいれて封印を解いた後、どうするつもりなんですか? 復活して力を得た後に」

 紗和の問いに揚は僅かに笑みを浮かべた。

「もともと僕はこの地上で生きる者ではない。君達もそうだ。だから本来あるべき所へ戻るんだよ」
「あるべき所?」
「お空の国だ」

 ピクリと、紗和のこめかみが震えた。こんな所で冗談を言うなどとは思いもしなかったため、対処に困ってのことだった。

「それはともかく、僕にはその前に果たさなければならない使命がある。それを済ませるのが第一の目的かな」
「何ですか、それ」
「人の淘汰(とうた)」

 それでは二年前に翔が言っていたことと差して変わりがないではないかと思った。ただ、翔は自分の消滅をも願っていた節が見受けられていたが。

「僕がそれを聞いて仲間になると思いましたか?」
「ああ、勿論」
「見くびらないでください」

 紗和は低く、しかしはっきりと言い返す。が、揚はそれを聞いていない様子だった。

「君は賢いからね。負けると分かっている勝負はしないだろ?」
「それならば、僕がいなくとも貴方は勝利するでしょう? それなのに何故僕を仲間に加えようとするんですか?」
「こちらも被害を最小限にくい止めたいのと、僕としては君達も天上へ連れ帰りたい。あの裏切り者の女との間にできた子であってもね。君達にはその資格があると思う。勿論反抗する者もいるだろうが、そういう連中は容赦なく消滅させるつもりだ」
「消…滅…?」
「そう、魂ごと消し去る。もう二度と転生はしない」

 まるでかつての翔が望んでいたこと、そのままに。

「そうなるのは嫌だろう?」
「残念ながら僕は人間なので、貴方の意には従えません」

 紗和の言葉に、揚は僅かに怒りの気を見せる。


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