第2章
再会と決別
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「いい部屋だね」
部屋にに入ると、揚はそう言って畳の上に座した。
「まだ越してきたばかりなので、片付けも行き届いていませんけど」
整然とした部屋に、紗和の性格が伺える。いつでも使えるようにと用意されている茶器にしても。
「どうぞ」
差し出された番茶を疑いもせず、揚はすすった。
「で、話って何ですか?」
揚の正面に座して、紗和は早速切り出す。が、揚はそれに対して惚けたような事を聞いてきた。
「君、学部はどこだったかな?」
おやっと、首を傾げながらそれでも素直に答える紗和。
「史学部ですけど」
「ああ、そうか。だったら大塚教授の日本史を履修しておくと後々都合がいいよ。そうだ、もうカリキュラムは組んだかい? 何なら僕がアドバイスしてあげるけど」
「話って、それですか?」
明らかに用件を外していることだと分かる揚の態度に、紗和は低く問う。
「まず、親睦をはかってからと思ったんだが」
「忙しいので手短にお願いしますって、言いましたよね?」
「分かった。悪かったよ」
揚は紗和の厳しい口調に肩をすぼめる。そして湯飲みにもう一度口をつけてから話し始めた。
「話と言うのは、君もおよその見当はついているとは思うが、僕の方へつく気はないかと言うことだ」
「何のことです?」
「とぼけないで欲しい。君達は既に僕を警戒して徒党を組んでいる。勾玉も手に入れている筈だ。違うかい?」
紗和は揚の顔を見やる。
今、この人は「自分」を警戒してと言ったのだ。その言葉の裏で、明らかに自分の正体を告げているのだ。
「今日、君の他にも竜の気を感じたよ。君ともコンタクトを取っているんじゃないのかい?」
「…何のことだか分からないんですけど」
多分、学内をうろついていた寛也のことだとは思ったが、知らぬ存ぜぬで済ませることにした。その紗和の表情を何と読み取ったのか、揚は少し肩を竦めてから言う。
「まあ、そんなことはどうでもいい。それよりも、どうだい、僕の仲間にならないかい?」