第2章
再会と決別
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「で、対策なんだけど」
紗和はあっと言う間にできあがった三人分の料理を皿に盛り付けて、テーブルに運ぶ。できたよと声をかける前にすっ飛んで来たのは寛也だった。
「巫女達が襲われたって言ってたよね。相手は何者か分かる?」
「ああ、朱雀」
「は?」
簡単に答える寛也に、紗和は目を丸くする。
「朱雀って、あの…?」
父竜の部下の筆頭である。そんなものが既に出現しているのかと、自分の呑気さを恨むと同時に、それをどうやって蹴散らしたのかに興味が沸く。
そんな紗和の表情に気づいたのか、寛也は低く言う。
「安心しろ。ヤツは倒したから。父竜が現存しているから、またすぐに転生するだろうって話だけどな、当分は乳幼児だ」
「って…」
紗和は何も返せなくなる。
寛也の言う短い内容から推測できることは、相手は人として転生し、それを死に至らしめたと言うことなのだ。今の日本社会に慣れ親しんでいる身からすれば、それがどう言うことなのか、誰もが知っている。
「どちらにしても、君達は僕なんかよりもずっと情報を持っているようだね」
ため息混じりに呟いて、紗和はテーブルにつく。杳はこちらの様子に気づいたふうもなく、テレビに目を向けていた。
「と言うことは、君達は偶然ここへ来た訳じゃないみたいだね」
偶然にしては出来過ぎているように思ったが。
「杳はどの程度、知っているのかな?」
少し声をひそめて聞く紗和に、寛也は困ったような表情を浮かべる。言っていいものかどうか、判断できない様子で。その寛也に小さな声で。
「前回の事もあるし、余計な事は知らせない方が良いと思うよ」
前回の事とは、言わずもがな2年前の事を言う。自分達の争いに杳を巻き込んで大怪我をさせたことは、今でも記憶に新しかった。自分の手の中で潰されていく杳の身体を、今でも鮮明に覚えている。あのような事態を二度と引き起こしたくはなかった。
それなのに。
「余計な事って、何?」
ふと、横から声が聞こえた。聞いていないと思っていたのに、しっかり聞こえていたらしく、杳が振り向いていた。
「いや、えっとー、杳には関係ないことだから…」
「オレ、5つ目の勾玉を持ってるから、無関係じゃいられないんだよ」
「え…?」
目を見張る紗和に、杳は面倒くさそうにテレビの前から立ち上がると、テーブルについた。それを目で追いかける紗和に、寛也が低い声のままで言う。
「黄玉、壊しただろ? それが何の因果か杳の身体に取り付いているんだ」
「取り付く?」